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yasuokaの日記: (新)常用漢字と携帯電話 9

日記 by yasuoka
小形さんのとこ経由でいただいた一昨日の漢字小委員会の資料を、ざーっとチェックしていたのだが、(新)常用漢字表の〔表の見方〕にある以下の付則は、かなりタチが悪い。

情報機器に搭載されている印刷文字の関係で,本表の掲出字体とは異なる字体(掲出字体「頰・賭・剝」に対する「頬・賭・剥」など)しか使用できない場合については,当該の字体の使用を妨げるものではない。

この付則を額面どおり受け取ると、携帯電話とかのJIS X 0208搭載機器では、(新)常用漢字への移行が非常にまずい形でおこなわれることになる。「剥」を搭載した現状の機器に対し、39区77点をそのまま「剝」に入れ換えるだけ、という対応がもっとも現実的ということになるのだ。この方法はJIS X 0208には違反しないが、ISO 10646との変換を考えると、かなり危険な選択肢だ。それを、(新)常用漢字が勝手に「どちらでもいい」と言ってしまうわけだから、39区77点に「剥」を搭載した携帯電話と「剝」を搭載した携帯電話が、国内で混在して使われるという恐ろしい事態になる。JIS X 0208としては一向にかまわないが、国際規格を視野に入れるなら、この付則はトンデモない言い草だ。

しかも、A字体-B字体まで計算に入れるなら、この問題は、43区43点の「頬」と「頰」、37区22点の「填」と「塡」にまで及ぶ。あるいは、28区24点の「叱」と「𠮟」なんてのも、かなり危険なケースだろう。そもそも、情報機器の規格ってのは経済産業省の管轄で、文化庁とは「縦割り行政」でやってきたはずなのに、ちゃんとしたネゴシエーションもおこなわずに(新)常用漢字が勝手にそこを踏み越えてくる、ってのは、一体どういう料簡なのだろう?

この議論は、yasuoka (21275)によって ログインユーザだけとして作成されたが、今となっては 新たにコメントを付けることはできません。
  • こんにちは、小形です。

    これは〈当該の字体の使用を妨げるものではない〉というお達しですよね。
    で、この当該の字体とは〈本表の掲出字体とは異なる字体〉イコール「頬・賭・剥」。

    つまり、趣旨は「JIS X 0208のまま、変えなくてもいいよ」であって、「どちらでもいい」とは違うと思うのですが、いかがでしょうか?
    • もちろん現時点ではそれでもいいんですが、問題は移行期です。「変えなくてもいい」っていうことをおおっぴらに言っちゃうと、それは「変えようとしている」人にとっては制限の一つになります。つまり、常用漢字の「剝」の代わりに「剥」を使っている人達がいて、それを「剝」に移行したい場合、どういう選択肢があるか。で、選択肢のうち、最も危険なのが↑ってことになるわけです。

      その意味では「変えなくてもいい」と「変えようとしている」が両方ともあると、それは結局「どちらでもいい」と等価だ、ということです。

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      • ああ、なるほど、JIS X 0208に違反した実装を許す口実となりうるということですね。

        うーん、しかしそれはどうでしょうか。それはアホな実装をするヤツが悪いということで、
        日ならずして招集されるはずのJISの委員会が、そうならないよう規格で諫めればよい話ではないでしょうか。

        実際、文化庁に言われるまでもなく、今のJIS X 0208は塩漬け状態で、だれも手を出せない、出しちゃいけない状態ですよね。
        そういう状況の中で、あえて空気を読まずにアホな実装しちゃうメーカーに、メリットってあるのかなあ……。
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        • あー、バカバカ、おれって本当にバカ。
          ようやく安岡さんが心配していたことが分かりました。

          まず追加案191字のなかでJIS X 0208で表現できない(収録されてない)4文字「頰、剝、、塡」があり、現状でシフトJISを使用している機器にとって、この4文字の対応が焦点になるという状況がある。

          そこでご指摘の「当該の字体の使用を妨げるものではない。」っていう条項が、まことに微妙なものとなり得る、ということですね。もちろん、文化庁としては「旧来のままでよい」と言いたいのだろうけれど、「妨げるものではない」=「変えてもかまわない」と受け取り、例えば0x966A(頬)に「頰」を割り当てる実装者が出てしまう。さらに呪われていることに他ならぬJIS X 0208が互換規準で「塡」の実装を条件付で認めているゆえ、これが新常用漢字表対応の「抜け道」になりかねない。現状でそんな実装が普及すれば、現状のWindows VistaやMac OS X 10.5との間で文字化け発生……ということですね。

          文化庁がやるべきことがあるとすれば、前掲の曖昧な文言で中途半端に実装に言及するのでなく、もっと明確に「許容する」という文言で言及すべき。そして情報機器における実装は「別途JISの対応をまつべし」とはっきりクギを刺すべきでしょう。たしかにこの文言は危険だと思います。

          しかし文化庁はこのことを本当に分かっているのかなあ。「賭」なんかを挙げて、「叱、填」を挙げていないことからすると怪しいようにも思えます。

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    • あ、もう一度読み直してみたんですが、JIS X 0208の6.6.4 互換規準のことをおっしゃってますね。
      つまり元来規格に明記された互換規準により、B字体(印刷標準字体)の実装が可能であり、その実装を促すきっかけになると。
      寝た子を起こすんじゃないよ、コノヤローと(そこまで言ってないか)。

      そうか、確かにそれはあり得るなあ……。
      しかし互換規準を決めたのは、他ならぬJISなんだから、
      やはり対応委員会で互換規準を廃止するなどの対策をとればよいのではないでしょうか。違うかな。
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      • それ以前に、「剝」を39区77点に実装したとしても、それは普通に包摂の範囲内なので、現時点のJIS X 0208には違反しない、ってとこが、かなり微妙なんですよ。それを違反とするためには、JIS X 0208を改正して15区94点に「剝」を追加(包摂分離)する、っていうのが現実的な解だし、それしかありえないでしょう。ただ、この現実解、「剝」と「塡」(15区56点)と「��」(47区52点)に関しては、JIS X 0208を改正しても実装がついてきそうですけど、「頰」の93区90点ってのは、1文字だけポツンと追加する感じが強くて、携帯電話とかがついてきてくれるかどうか…。
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