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yasuokaの日記: ANSIが1963年に制定したASCIIコード

日記 by yasuoka

キーボード配列QWERTYの謎』の読者から、矢沢久雄の『IT言葉はオレに聞け!』(日経BP社, 2008年12月)を読んでほしい、と連絡があった。早速、読んでみたところ、p.68の「文字コードの元祖はASCIIコード」の以下の文章でひっかかった。

標準的な文字コードを使うことで、さまざまなコンピューター間で情報交換ができます。世界で最初に普及した文字コードの元祖をご存じですか? それは、1963年にANSI(米国規格協会)が制定したASCII(アスキー)コードです。
ASCIIコードの00~1Fまでには、画面に表示される文字ではなく、通信に必要な制御コードが割り当てられています。例えば05は相手に通信可能かどうかを問い合わせるコードでENQ (enquiry、エンキュー)と呼ばれます。06は通信可能の肯定応答でACK (acknowledge、アック)といいます。否定応答はNAK (negative acknowledge、ナック)と呼ばれ、15というコードです。このことからも、ASCIIコード制定の目的が情報交換だったことがうかがえます。

文字符号の歴史 欧米と日本編』にも書いたが、ANSI (American National Standards Institute)の発足は1969年10月6日なので、1963年時点でANSIは存在しない。ASCIIを1963年6月17日に制定したのは、ASA (American Standards Association)だ。しかも、1963年時点のASCIIは、現在のASCIIとは違っていて、英小文字を含まない4ビット/6ビット/7ビットの文字コードで、制御文字にしても05はWRU、06はRU、15はERRだ。

この『IT言葉はオレに聞け!』には、他にもガセネタがちりばめてあって、たとえばp.98の「キーボードが複雑怪奇な理由」では

キーボードのアルファベットの配置は、驚くなかれ、わざとバラバラにしてあるのです。その理由もタイプライター時代の名残です。機械式のタイプライターを使ったことがある人は経験があると思いますが、キーを連打するとアーム同士がからまることがあります。これを解決するために、打ちやすくかつからみにくい配列にしてあるのです。

などと書き連ねてある。そのガセネタに関しては、日経パソコンでの連載中に、『Daugherty Visible』(1893年発売)より以前のタイプライターは「アーム」などという機構を有さない、と私(安岡孝一)が指摘して、その指摘を矢沢久雄も受けいれたはずだろう?

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にわかな奴ほど語りたがる -- あるハッカー

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