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yasuokaの日記: 夫婦別姓と戸籍の氏

日記 by yasuoka

今朝の新聞で、夫婦別姓に関する千葉景子法務大臣のインタビューが一斉に報じられていたので、「民法の一部を改正する法律案要綱」(平成8年2月26日法制審議会答申)を引っぱり出してみた。

第三 夫婦の氏
  一  夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
  二  夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。
第四 子の氏
  一  嫡出である子の氏
     嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又は父母が第三、二により子が称する氏として定めた父若しくは母の氏を称するものとする。

この答申が、その後13年間もたなざらしになってきたこと自体は、確かに「異常」なので、さっさと選択的夫婦別姓を実現したらいいと思う。しかし、千葉景子自身は、↑の答申よりさらにドラスティックな法案を参議院に提出している(平成21年4月24日付け第171回国会参議院第20号法案)。その要綱を見てみよう。

第三 夫婦の氏(第七百五十条関係)
 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとすること。
第四 子の氏
 一  嫡出である子の氏(第七百九十条関係)
  1  嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又はその出生の際に父母の協議で定める父若しくは母の氏を称するものとすること。

つまり、夫婦別姓を選択した場合には、子の氏を事前に決めておかず、出生時に決めることにしよう、というのが千葉景子の法案である。これが何を意味するのか。

法制審議会が、子の氏を事前に決めておくよう答申したのは、戸籍法を大きく改正せずに、民法改正だけで夫婦別姓を実現したかったからだ。戸籍法第6条を見てみよう。

第6条  戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。ただし、日本人でない者(以下「外国人」という。)と婚姻をした者又は配偶者がない者について新たに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。

つまり戸籍法は、子の氏がバラバラであることを想定していない。まあ、もちろん、夫婦の氏がバラバラであることもあまり想定していないのだが、それでも、戸籍の中で配偶者だけが別の氏である場合と、全員がバラバラの場合では、扱い方が全く異なってくるのは明らかだ。しかも「戸籍の氏」というものを仮定できなくなった場合、その影響は、戸籍法の他の条項のみならず、あちこちの法律や省令に及ぶ。それを法制審議会は避けたのだ。

ただ、千葉景子も、こんなドラスティックな法案を提出する以上は、戸籍法や家事審判法、あるいはその他の法律や省令を、全て改正するつもりでいるのだろう。でもそれならば、なぜ、それらの改正案を、第171回国会に同時に提出しなかったのか。謎は深まるばかりである。

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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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