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182224 journal

yasuokaの日記: モールス符号と英語の文字頻度

日記 by yasuoka

石井威望の『企業と情報』(筑摩書房、1970年3月)を読んでいたところ、p.73の「表1・1 モールスの原符号」に妙なことが書かれているのを見つけた。

表1・1 モールスの原符号
E ―         12,000
T ―――        9,000
A ― ―――      8,000
I ― ―        8,000
N ――― ―      8,000
O ―   ―      8,000
S ― ― ―      8,000
H ― ― ― ―    6,400
R ―   ― ―    6,200
D ――― ― ―    4,400
L ―――――――    4,000
U ― ― ―――    3,400
C ― ―   ―    3,000
M ――― ―――    3,000
F ― ――― ―    2,500
W ― ――― ―――  2,000
Y ― ―   ― ―  2,000
G ――― ――― ―  1,700
P ― ― ― ― ―  1,700
B ――― ― ― ―  1,600
V ― ― ― ―――  1,200
K ――― ― ―――    800
Q ― ― ――― ―    500
J ―   ― ― ―    400
X ― ――― ― ―    400
Z ― ― ―   ―    200
注:(印刷所でしらべたタイプの量との関係が示してある.)

「モールスの原符号」という表題にもかかわらず、示されている符号は、オリジナルのモールス符号(U. S. Patent No.1647)とは全く異なっている。ざっと見た感じでは、共同研究者のAlfred Vailが考案した「アメリカンモールス符号」に似ているが、Vailのモールス符号では「・ ・・・」は「&」に割り当てられており、「J」は「-・-・」なので、やはりどうも違うようだ。また、『The American Electro Magnetic Telegraph』(Philadelphia: Leo & Blanchard, 1845年)のp.168によれば、Vailが印刷所の活字箱を調査した結果は、Eが120、Tが90、Aが85、IとNとOとSがそれぞれ80、Hが64、Rが62、Dが44、Lが40、Uが34、CとMが30、Fが25、WとYが20、GとPが17、Bが16、Vが12、Kが8、Qが5、JとXが4、Zが2、という比率だったはずなので、↑の「タイプの量」は「A」が8,500でないと比率が合わない。

ちなみに、e:t:a=120:90:85という活字の比率は、John Johnsonの『Typographia, or the Printers' Instructor』(London: Hurst Rees Orme Brown & Green, 1824年)のVol.II p.30や、Charles Carroll Bombaughの『Gleanings from the Harvest-Fields of Literature, Science and Art』(Baltimore: T. Newton Kurtz, 1860年)のp.15にも現れる比率なので、当時の英語圏の印刷所では一般的だった可能性が高い。ただ、Philip Lacombeの『The History and Art of Printing』(London: J. Johnson, 1771年)のp.245や、Irving E. Fangの「It isn't ETAION SHRDLU, It's ETAONI RSHDLC」(Journalism Quarterly, Vol.43, No.4, 1966年冬, pp.761-762)では、また別の比率が示されていることから、あるいは19世紀の英語圏に限定した方がいいのかもしれない。

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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー

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