yasuokaの日記: モールス符号と英語の文字頻度
石井威望の『企業と情報』(筑摩書房、1970年3月)を読んでいたところ、p.73の「表1・1 モールスの原符号」に妙なことが書かれているのを見つけた。
表1・1 モールスの原符号
E ― 12,000
T ――― 9,000
A ― ――― 8,000
I ― ― 8,000
N ――― ― 8,000
O ― ― 8,000
S ― ― ― 8,000
H ― ― ― ― 6,400
R ― ― ― 6,200
D ――― ― ― 4,400
L ――――――― 4,000
U ― ― ――― 3,400
C ― ― ― 3,000
M ――― ――― 3,000
F ― ――― ― 2,500
W ― ――― ――― 2,000
Y ― ― ― ― 2,000
G ――― ――― ― 1,700
P ― ― ― ― ― 1,700
B ――― ― ― ― 1,600
V ― ― ― ――― 1,200
K ――― ― ――― 800
Q ― ― ――― ― 500
J ― ― ― ― 400
X ― ――― ― ― 400
Z ― ― ― ― 200
注:(印刷所でしらべたタイプの量との関係が示してある.)
「モールスの原符号」という表題にもかかわらず、示されている符号は、オリジナルのモールス符号(U. S. Patent No.1647)とは全く異なっている。ざっと見た感じでは、共同研究者のAlfred Vailが考案した「アメリカンモールス符号」に似ているが、Vailのモールス符号では「・ ・・・」は「&」に割り当てられており、「J」は「-・-・」なので、やはりどうも違うようだ。また、『The American Electro Magnetic Telegraph』(Philadelphia: Leo & Blanchard, 1845年)のp.168によれば、Vailが印刷所の活字箱を調査した結果は、Eが120、Tが90、Aが85、IとNとOとSがそれぞれ80、Hが64、Rが62、Dが44、Lが40、Uが34、CとMが30、Fが25、WとYが20、GとPが17、Bが16、Vが12、Kが8、Qが5、JとXが4、Zが2、という比率だったはずなので、↑の「タイプの量」は「A」が8,500でないと比率が合わない。
ちなみに、e:t:a=120:90:85という活字の比率は、John Johnsonの『Typographia, or the Printers' Instructor』(London: Hurst Rees Orme Brown & Green, 1824年)のVol.II p.30や、Charles Carroll Bombaughの『Gleanings from the Harvest-Fields of Literature, Science and Art』(Baltimore: T. Newton Kurtz, 1860年)のp.15にも現れる比率なので、当時の英語圏の印刷所では一般的だった可能性が高い。ただ、Philip Lacombeの『The History and Art of Printing』(London: J. Johnson, 1771年)のp.245や、Irving E. Fangの「It isn't ETAION SHRDLU, It's ETAONI RSHDLC」(Journalism Quarterly, Vol.43, No.4, 1966年冬, pp.761-762)では、また別の比率が示されていることから、あるいは19世紀の英語圏に限定した方がいいのかもしれない。
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