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216302 journal

yasuokaの日記: ポパイが最初にホウレン草を食べたのはいつなのか

日記 by yasuoka

唐沢俊一検証blogでの私(安岡孝一)のコメントを読んだ方から、新聞連載時点の『Thimble Theater』はどこで読めるのか、と質問があった。唐沢俊一が「エンサイスロペディア第37回『ポパイ』」(パチスロ必勝ガイドNEO, 第4巻, 第6号 (2010年6月), p.079)でバラ撒いたPopeyeネタ(↓に引用)に関する質問だ。

マンガ版では最初、ポパイはキャベツを食べて強くなっていたのだが、アニメでは音声を入れなくてはならない。“キャベージ”では音の響きが悪い、と考えた演出家が、ポップに響く“スピナッチ(ほうれんそう)”を採用し、ポパイがピンチに陥ったとき、カンヅメのほうれんそうを食べて大活躍、という基本パターンが出来上がった。

全くのガセネタだ。Elzie Crisler Segarが新聞連載中の『Thimble Theater』にPopeyeを登場させたのは、1929年1月17日の「‘Gobs’ of Work」でのことだ。Castor Oylに雇われた水夫として、Olive Oylや幸運のめんどりBerniceと共に船出する。ここでのストーリーの中心は、めんどりのBerniceであり、その頭をなでるたびに幸運が舞い込むという仕掛けだ。この結果、Popeyeは拳銃の弾を16発うちこまれても死なないし、CastorとOliveは大金持ちとなる。ちなみに、Popeyeがホウレン草を食べてパワーアップするシーンは、ここから3年後の1932年5月21日「Popeye Knows His Vegetables」においてのことで、すでに恋仲となったOliveにホウレン草の缶詰を買ってきてもらう。その時のPopeyeのセリフが「SPINACH IS THE MOST WON'ERFUL STUFF TO GIVE A PERSON HELT STRENGT' AN' VITALIRY THEY IS」で、このシーンでPopeyeとホウレン草が結びついたわけだ。一方、Popeyeの最初のアニメ映画『Popeye the Sailor』(Fleischer Studios)が公開されたのは1933年7月のことであり、製作者のMax FleischerがKing Features Syndicateと契約したのは1932年11月のことだ。すなわち、アニメ版のためにPopeyeがホウレン草を食べる設定にした、という唐沢俊一の説は完全に事実に反している。アニメ化において大きく変更されたものがあるとすれば、それは、Blutoの役どころだろう。

ところで最初の質問だが、新聞連載時点での『Thimble Theater』のこの辺を読みたいのなら、もちろんNew York Evening Journalを読むのがスジで、それにはNew York Public LibraryかLibrary of Congressに出向くのが確実だ。が、それはやはり大変なので、私個人としては、Newspaper Archiveで他の『Thimble Theater』掲載紙(たとえばNewark Advocateなど)を読む、というのが、インターネット上でという場合には、まあ無難だと思う。ただ、Newspaper Archiveは有料なので、それが嫌、という向きには、たとえばgoogleのNews Archive SearchでVictoria Advocateを読むという方法もある。ただし、Victoria Advocateが『Thimble Theater』の掲載を始めたのは1931年6月29日なので、それ以前のものは読めない。

なお、Popeyeがキャベツを食べるシーンというのを、私自身は、まだ見つけきれていない。いったい、いつの新聞連載だったのか、ご存知の方はぜひ教えてほしい。

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計算機科学者とは、壊れていないものを修理する人々のことである

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