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250133 journal

yasuokaの日記: 文字情報基盤構築のフォント公募

日記 by yasuoka

経済産業省の『平成22年度電子経済産業省推進費(文字情報基盤構築に関する研究開発事業)に係る委託先の公募』に関して、この3週間というもの、あちこちから私(安岡孝一)のもとに質問があった。いいかげん、同じことばかり答えるのも飽きてきたので、今までに答えた内容を、ざっと、ここにまとめておくことにする。

本事業は、(1)文字情報基盤の将来像や課題を整理するための調査研究と、(2)この調査研究を進める上での調査の素材となるフォントの整備の2つの内容により構成される。

調査研究の方も問題なのだが、今のところ質問が集中しているのはフォントの方なので、以下はフォントについて書くことにする。

対象文字: 戸籍統一文字、住民基本台帳ネットワークシステム統一文字に含まれる文字とする。また、JISx0221 に含まれる公的文書で一般に使われる非漢字も対象とすることとする。上記のうち漢字は、汎用電子情報交換環境整備プログラムで整理されている漢字であり、約59,000文字である。(同プログラムで整理された58,713文字に、登記統一文字などのうち行政業務で必要な欠かせない文字が発生した場合に、若干の文字を追加。)

端的に言えば、『汎用電子情報交換環境プログラム成果報告書別冊』(日本規格協会、2009年3月)全12冊に掲載された67951行のうち、「戸籍文字」あるいは「住基文字」の欄に文字が入っている58713行に関して、それらの各文字を収録したフリーフォントを作れ、ということである。逆に言えば、「登記文字」の欄だけしかない9238字は作らなくてよい。

フォント: 明朝体。OpenTypeフォーマットで作成。(ISO/IEC 14496-22:2009 (Second Edition))

ISO/IEC 14496-22が指定してあるので、基本的にはUnicodeのOpenTypeフォントを作ることになる。しかし58713字のうち、第10分冊p.4735のKS000100(えだなし)以降にある3567字には、現状ではUCSが振られていない。

動作環境: Windows XP, Windows Vista, Windows 7, MacOS10.6環境において正確に表示されるか確認を行うこと。

Windows XPでの表示を想定しているため、IVSは使用困難である。しかし58713字の中には、UCSがダブって付けられている漢字が4505組9995字もある。

で、この、はっきり言ってどうしようもない『公募』に対する、私なりの解決策だが。まず、UCSがついてない3567字のうち、827字に関してはCJK Extension CやDまで含めれば、UCSを振ることができる。しかし残り2740字に関しては、どうしようもない。CJK Extension Eは平成22年度内に間に合わないし、たとえ間に合ったとしてもKS152850(はかた)のような「漢字」には、現状ではUCSが振られる可能性は極めて低い。これら2740字については、涙をのんでU+E000~U+F8FFにマッピングするしかない。

また、UCSがダブっている4505組9995字に関しては、とりあえずGSUBテーブルでaaltタグなり何なりを使ってでもマッピングし、同時にIVSによるマッピングも出来る限りおこなうべきだろう。また、これらの多くは、実はAdobe-Japan1-6に含まれていることから、フォント全体をCFF-OFFで設計する方がスジがいいように思える。ただ、その場合は、Adobe-Japan1-6に入りきれない全ての漢字に関して、できるだけ早くAdobe(というよりKen Lunde)と相談して、Adobe-Japan1-7(あるいはそれ以降)でのCIDを確定してもらうべきだろう。

けれど、それでもやはり、平成22年度内でのOpenTypeフォント完成ってのは、あまりに無理がありすぎる。どうして、こんなバカげた『公募』になっちゃったんだろ。

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あと、僕は馬鹿なことをするのは嫌いですよ (わざとやるとき以外は)。-- Larry Wall

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