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yasuokaの日記: 読売新聞とQWERTY配列 1

日記 by yasuoka

『キーボード配列 QWERTYの謎』の読者から、今朝の読売新聞の「ECONOトリビア」欄を見てほしい、との御連絡をいただいた。読売新聞大阪版(第22277号)を見に来たところ、p.7に「不要な文字 打たない工夫」と題する以下の記事を見つけた。

パソコンのキーボードのキーの配列が不自然だと思ったことはありませんか。左上端から右方向にアルファベットが「Q、W、E、R……」の順に並び、「QWERTY配列」と呼ばれています。でも、なぜABC順ではないのでしょうか。
ルーツはタイプライターにありました。諸説ありますが、現在に伝わる商業用タイプライターの起源は、米国の発明家・ショールズが製造し、1874年に発売された製品だとされています。
キーを押すと、先端部に活字が付いたハンマーが動いて紙に印字する仕組み。当初はABC順でしたが、連続して打ったり、早く打ったりすると近くのハンマー同士が絡み合い、不要な文字まで印字されてしまうという欠陥がありました。そこで、連続して打つ頻度の高い文字を遠ざける並び方に変えたといい、QWERTY配列が生まれました。
その後、米国で1930年代に、よりスムーズに打てるという「ドボラク配列」が誕生。日本でも富士通が1980年にかな文字入力に適した「親指シフトキーボード」をワープロに採用するなどしましたが、QWERTY配列が今も標準式配列となっています。

この記事には、『商業用タイプライターショールズ&グリッデン タイプライタ」(1874年) =菊武学園提供』とキャプションのついた写真もあるのだが、もうツッコミどころ満載で、どこから手を付けていいかわからない。とりあえず、1874年に発売された「Sholes & Glidden Type-Writer」は、E. Remington & Sons社の製造であって、Christopher Latham Sholes自身の製造ではない。「諸説ありますが」も何も、製造者に関しては、菊武学園の『タイプライタ博物館』p.5にも「E・レミントン&サンズ社」と明記してある。ただ、この写真のタイプライターが本当に1874年製造かどうかについては、疑問が残る。『タイプライターに魅せられた男たち』第10回に示した、いわゆる「デコレーション・モデル」なのだ。しかも、私(安岡孝一)の記憶する限りでは、菊武学園の所蔵する「Sholes & Glidden Type-Writer」はフットペダルがなく、キーの一つが「£」に変更されており、それらの点でも、1874年製造というのは無理があるように思える。

「連続して打つ頻度の高い文字を遠ざける並び方に変えた」という説には、私は全く賛成できない。この点に関しては、「Sholes & Glidden Type-Writer」の実際の「ハンマー」の配置も含め、「On the Prehistory of QWERTY」(ZINBUN, No.42 (2011年3月), pp.161-174)で詳細に議論したので、ぜひ読んでほしい。また、「親指シフトキーボード」が英字にQWERTYを採用していたのは、かなり有名な事実だし、私自身も昔の日記で言及したのだが、この記事は「親指シフトキーボード」の実物を見ずに書いてるのかしら?

この議論は、yasuoka (21275)によって ログインユーザだけとして作成されたが、今となっては 新たにコメントを付けることはできません。
  • 今朝の読売新聞大阪版(第22281号)朝刊p.34に、以下の「訂正 おわび」が掲載されてました。

    2日【経済】「ECONOトリビア 不要な文字打たない工夫」の記事中、 「ショールズが製造し、1874年に発売された製品」とあるのは、「ショールズが開発し、E・レミントン・アンド・サンズ社が1874年に発売した製品」の誤りでした。確認が不十分でした。

    うーむ、残りの部分は訂正されなかったのね…。

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クラックを法規制強化で止められると思ってる奴は頭がおかしい -- あるアレゲ人

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