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政府

yasuokaの日記: 番号法と地方税法における守秘義務

日記 by yasuoka

「マイナンバーと地方税法における守秘義務」の読者から、矢口徹の『地方税分野における番号の利用場面について』(月刊J-LIS, 第1巻, 第10号 (2015年1月), pp.27-32)を、読んでみてほしいとの御連絡をいただいた。読んでみたのだが、地方税に関する特定個人情報を提供する際、どうしても「本人の同意」が必要だということにしたいらしく、かなりシッチャカメッチャカなことが書かれていた。たとえば以下の部分。

地方税法第22条は、地方税に関する調査等に従事する者がその事務に関して知り得た秘密を漏らした場合に、通常の地方公務員法の守秘義務よりも重い罰則を課しており、所得情報を始めとする地方税関係情報の第三者への提供については、慎重に対応することが求められている。そのため、情報提供ネットワークシステムを通じた地方税関係情報の提供についても、この地方税法に規定する守秘義務との関係が問題となる。

なぜそこで、地方公務員法の守秘義務との比較をおこなうのか、さっぱりわけがわからない。特定個人情報の話なのだから、比較すべきは番号法に決まっている。実際、地方税法第22条より番号法第69条の方が、罰則が重い。番号法第69条より罰則の軽い地方公務員法第60条をひっぱりだしてきて、「そのため」とか書かれても、前提も論理も完全に崩壊しているので、私(安岡孝一)には全く理解できない。

具体的に提供が可能な特定個人情報の項目については、番号法別表の主務省令において規定していくこととなるが、地方税法上の守秘義務の趣旨を踏まえ、事務のために必要最低限の項目に限定するとともに、本人の同意を得るべき事務についても法令で規定される予定である。

「規定される予定である」って何の話? 番号法別表第一の主務省令は2014年9月10日に、別表第二の主務省令は2014年12月12日に、それぞれ公布されたが、「本人の同意を得るべき事務」など一つも規定されていない。規定されていないものを「規定される予定である」と強弁したところで、何の裏付けもないんだけど、実際、これらの主務省令を施行前に改正しようとでもいうのか。

何度でも書くが、そもそも番号法第29条は、行政機関個人情報保護法第8条第2項第1号を書き換えることで、「本人の同意」に「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって」という厳しい条件を付けている。端的には、本人が同意しようと同意しまいと、番号法別表の事務における特定個人情報の扱いが変わったりはしないのだ。一方で、地方税法における守秘義務が、「本人の同意」で解除されるなんて話は、地方税法のどこにも書いていない。ヨタ話もいいかげんにしろ、と思うのだが、このあたり総務省自治税務局はいったい何を考えているんだろう。

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犯人は巨人ファンでA型で眼鏡をかけている -- あるハッカー

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