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Pravdaの日記: 〔DVD〕 情婦

日記 by Pravda

「結末は決してお話しにならないでください」という映画は多いものの、なかなか本当に楽しめる作品は限られるようです。そんな中から、名匠ビリー・ワイルダー監督の傑作『情婦』(1957年)。いわゆる法廷ミステリーもの。

舞台は1952年のロンドン。病院から退院したばかりの老弁護士ウィルフリッド卿のもとに、一件の弁護依頼が舞い込む。軍隊を退役後、職を転々としていたレナード・ボールは、金持ちの未亡人エミリー・フレンチの殺人容疑をかけられていた。未亡人が殺される一週間前、未亡人の遺産のほとんどがレナードに渡るよう書き換えられており、レナードのアリバイを証明できるのは、レナードがドイツ進駐軍時代に知り合って結婚した愛妻のクリスチーネのみ。非常に不利な状況の中、老弁護士ウィルフリッド卿の闘志に火が付き、体調を顧みず弁護依頼を受ける。そして裁判が始まる…。

ドイツ人の妻のクリスチーネの役はマレーネ・ディートリッヒ。この頃56歳ぐらいですが、レナードと知り合うドイツの酒場のシーンで、男装&脚線美を披露する箇所があります。お約束でしょうか。容疑者レナード・ボールに扮するのがタイロン・パワー。個人的には何となく大味な役者さんという印象を持っていたのですけど、改めて観ると、うまいですね。残念ながら、この映画がタイロン・パワーの遺作となってしまいましたが。

この映画で一番写ってる時間の長い、老弁護士ウィルフリッド卿の役はチャールズ・ロートン。頑固者で老獪で使命感の強いキャラを好演。彼に付き添う中年看護師ミス・プリムソルに扮するのがエルザ・ランチェスター。このプリムソル看護師、杓子定規で口やかましく、ウィルフリッド卿は毒舌で対抗しますが、内心ではプリムソル看護師の責任感を高く評価しており、そのあたりの機微が見事。よく息が合うなと思ってたら、この二人は実生活で夫婦だったそうです。ちなみに、エルザ・ランチェスターは『フランケンシュタインの花嫁』(1935年)で「花嫁」を演じた人。

緻密な構成と演出は、さすが脚本家出身のビリー・ワイルダー監督だけあって、うまいもんです。小道具の使い方もあざやか。また、法廷内のシーンが多いのですけど、まったく飽きさせない絵づくりは、撮影のラッセル・ハーランの手腕を高く評価したいと思います。DVDのマスターの質の良さもあるのでしょうが、グレイの階調の使い方が実に綺麗。

サスペンス映画というと、アルフレッド・ヒッチコック監督の名前があげられることが多く、それに異議をとなえるワケではありませんが、ビリー・ワイルダー監督作品にもこんなのがありますよ、ということで。

以下、DVD裏のデータより。

■ CAST
タイロン・パワー
マレーネ・ディートリッヒ
チャールズ・ロートン

■ STAFF
監督・脚本:ビリー・ワイルダー
製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr.
原作:アガサ・クリスティ
脚本:ハリー・カーニッツ
撮影:ラッセル・ハーラン

公開年:1957年
字幕スーパー、日本語字幕&英語字幕
117min.
モノクロ
発売元:20世紀 フォックス エンターテイメント ジャパン株式会社

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クラックを法規制強化で止められると思ってる奴は頭がおかしい -- あるアレゲ人

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