uruyaの日記: 南極(人) / 京極夏彦
南極(人) / 京極夏彦
★★★☆☆
売れない小説家赤垣廉太郎は、小説シュバル編集者椎塚有美子にけしかけられて、数々の事件にいやいや立ち会う。行く先々で、文壇の生ゴミ、カス作家、簾ハゲの南極夏彦がからんでくる。
〈南極探検隊〉
海で乾いていろ!
セクハラゾンビの異名をとる吉良光太郎が、海に飛び込んだ瞬間の写真。水面上にくっきりと写る老婆の姿。
宍道湖鮫
UMAを探しに島根県を訪れる。目撃者はジョシコーセーの大盛望。
夜尿中
泣く仁王像の噂を追って滋賀県へ。
ぬらりひょんの褌
大原大二郎が若かりしころ。いっとき住んでいた中野のアパートで、ぬらりひょんに遭遇していた。
〈帰ってきた南極探検隊〉
GAS NOTE
清純キャラの女子アナ甘味かの子が、生放送中に屁をこいて失脚した。ライバルの肉体派アナ辛朽ルー子が捨てたゴミから、ガスノートが発見される。
探偵がリレーを…
全日本ミステリ作家協会五十周年記念イベント。第二会場を仕切る幹部、干菓子野ケーキの影に、辛口評論家北極星ヒカルの姿が。
毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る
大握寿司昌の別宅に「出る」らしい。毒マッスル海胆という、タケノコをゆでる老婆の霊を祓う、めずらしいウニを持って現場へ向かう。
巷説ギャグ物語
椎塚有美子は赤塚ワールドに迷い込んだ。
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きっちり元ネタ消化してから挑んだのだが、元ネタ関係ねえじゃん、これ。どれもおもしろかったから、読む手間は苦にならんけどさ。タイトルがパロディになってるだけで、読んでなくてもまったく問題ない。ただし、『ぬらりひょんの褌』と『巷説ギャグ物語』は、ある程度まで世界観を知っている必要があるかな。これらをまったく知らない人は少ないだろうけど。
内容は、ものすげぇくだらない。超絶的に。『六枚のとんかつ』並みにくだらない。『どすこい』ではまだしもパロディであり、そこに笑いの王道「かぶせ」が乗っかる体裁になってたが、今回のは単に低俗なドタバタ劇である。楽屋落ちでもある。しかもメタである。ギャグ漫画ならぬ「ギャグ小説」を模索した実験小説、ということになるらしい。
こういうばかばかしいものもまんざら嫌いではないのであり、くすくす笑いながら読み、そこそこおもしろかったのでよかった。コネタが多岐にわたっていて、なかには見落としているものもあるかもしれない。
タイトルネタがだんだん苦しくなっていくのも見どころ。毒マッスルとかひどい。
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