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日記

akiraaniの日記: 書籍自炊の是非とルール化の意味について 2

日記 by akiraani

昨日のねためもでクリップしたこの記事に関連したお話のまとめとか。

自炊代行に道筋を、許諾ルール検討「Myブック変換協議会」に狙いを聞く(InternetWatch)

実はMyブック変換協議会の言ってることは、成立する見込みというのはあんまりない。少なくとも、代行業者からの徴収というのはものすごくハードルが高い。
理由は主に二つ
・権利者(著者)に分配するだけの業務基盤が確保できない
・そもそも分配できるほど徴収できない
インタビューを読む限り、そのあたりのハードルの高さは認識しているようで、ちゃんと機能するシステムは単品では実現不可能だとの見解が述べられています。

今回お金を取るというのは、許諾という構成からそう言っているだけであって、営利になるほどの許諾を出せるとは思えない。ルール化しないまま無軌道な電子化に入ってしまうと誰もがよくないだろうと思うのでやっているわけです。

では、なぜMyブック変換協議会なるものを発足する必要があったかというと、お金以外の理由で自炊代行を許諾するルールが必要で、その認識をできるだけ早く広めなければいけない事情があるからだ。

まず、ルール作りが必要な理由だが、法律での対処ができない状況で野放しになってしまうというリスクがある。

みんな正面からダメだと抜け道を探していくんですよ。「自炊の森」(※6)もそうだし、今だって機材のレンタルをしているところもあるし、それの究極にあるのが非破壊型スキャナーですね。普通に許諾しても誰も損しないのに、止めてしまうことで逆に変な形で広がっていく。

次に、急がなければならない理由は、作家7人が起こした自炊代行業者への提訴によるものだ。この裁判が決着してまうと、泥沼の北風戦略からの方向転換が極めて難しくなる恐れが強い。

そういう状況の中で、去年11月に2度目の提訴(※4)がありました。今回の訴訟では、絶対に自炊代行業者は許さないし、電子化は許さないという強い意志を持っている大手出版社があって、“撲滅”という言葉を使っているんです。
(中略)
私見ですが、今回の判決がクロになる確率は高いと思っていますし、著作権関係の法学者、法律家の人もそう思っているはずです。クロと出た場合、社会的に撲滅ルールに乗ってしまう。

いずれも、至極もっともで、筋の通った話だと思います。少なくとも、現在の自炊代行業者を撲滅し何が何でも許さないという態度は、いずれ訪れる技術的な問題解決がなされたあとに決定的な破局をまねくことになる。
逆に、一定のルールさえ守られるのであれば、蔵書の電子化をユーザーが行うことは著者や出版社にもメリットがある。

一方、断裁した本を売るのは自由なんですよね。個人の所有物ですから。ただ、これをできれば廃棄処分する流れにしたい。なぜなら、日本の市場には書籍があふれていて、作りも頑丈なのでなくならず、売ることで誰かに渡るサイクルになっています。つまり、どこかで本がなくなるスキームを作らない限り、誰の書棚も空かないんですよ。

つまり、蔵書を電子化して、原本は捨てるというルールを定着させることができれば「ブックオフ問題」を解決することができるという話だ。

三行にまとめると、こういうことになる

  • ただ禁止禁止と叫んでも無秩序な電子化がすすむだけ
  • 無秩序な電子化は合法範囲内でも問題が多く、「一定のルールのもとに許諾」した方がみんなが幸せになれる
  • そういうルール化模索の動きを、自炊代行業者への訴訟に決着がつくまでに始める必要がある

個人的に、このMyブック変換協議会の趣旨には全面賛成です。
なので、ちょっと日記で取り上げて解説してみました。

4/19に行われるシンポジウムはニコ生での配信も予定しているとのことなので、ぜひそちらでチェックしようと思います。

以下、過去の日記から参考になりそうなエントリ
書籍自炊関連
電子書籍のイノベーションはコンシューマブックスキャナが起こす
乗り遅れたので日記に:本をスキャンしてPDFに変換
電子書籍の自炊のすすめ
自炊に関する問題点について
書籍自炊の話:新古書店との関係
自炊についてのまとめ
書籍自炊基本宣言
書籍自炊、電子書籍にまつわるあれこれ
自炊代行問題の業者からの回答
自炊の森の話
書籍の非破壊複製がまずい理由
自炊騒動の話
スキャン代行問題の本質
自炊代行での著作権使用料徴収には賛成だ、という話

出版著作隣接権関連
書籍の著作隣接権の話
続・書籍の著作隣接権の話
書籍の著作隣接権解説エントリのようなもの
続々・書籍の著作隣接権の話
書籍の著作隣接権が不要だと考える理由

ストーリーになった書籍自炊関連記事
格安で「本をスキャンしてPDFに変換する」お手伝いはじまる
あなたは「自炊」派?
出版業界、書籍のスキャン代行サービス業者約100社に質問状
東野圭吾氏や弘兼憲史氏が自炊代行業者を提訴
出版社への著作隣接権付与、継続審議へ
「自炊代行」業者に対し著作権使用料の徴収を求めることで「合法化」する試み
「BOOKSCAN」のインタビューに応じた著名人に「出版広報センター」からお手紙が届く

いやしかし、われながらすごい数のエントリだな……。
これで一冊くらい同人誌作れるんじゃないだろうか(笑)

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  • 自分もScanSnap買いましたから。

    結局、CDとかDVDとか本とかは、
    完全にモノとしてコレクターズアイテムにしたいならともかく、
    さっさと記録媒体を売る商売じゃないことを共通認識にしないと、
    誰も幸せになれないんだろうな。

  • by Anonymous Coward on 2013年04月13日 15時20分 (#2362994)

    要点はまさにおっしゃる通りです。
    先行きは見えませんが、このような動きが、他の著作権問題の解決にも影響してゆく可能性もあると思っています。
    日本的な解決方法はTPPまで見据えた現時点での最重要問題だと認識しています。
    瀬尾

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