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日記

akiraaniの日記: Myブック変換協議会シンポジウム「蔵書電子化の可能性を探る」の感想とか 5

日記 by akiraani
Myブック変換協議会〔正式名称:蔵書電子化事業連絡協議会〕主催のシンポジウム「蔵書電子化の可能性を探る」をニコニコ生放送のタイムシフトで見ました。

以前の日記でも書きましたが、個人的にはMyブック変換協議会の趣旨には賛成です。一部ではなく、主張されていることのおおむね全てについて大賛成です。
なので、それ以外の感想というのは実はあんまりないです(笑)

で、感想ですが、趣旨を理解できている視聴者がやっぱり少ないのだなというがまず思ったことでした。
特に、質疑応答で真っ先に手を上げたやる気満々のくせにDQN名前も所属もを名乗らずけちをつける方のような連中(まとめ参照)がまた大きな声を張り上げるんだろうなと思うとちょっと憂鬱です。

それと思ったのが、やはりエンドユーザー側での啓蒙活動も必要なのではないか、ということですね。
蔵書電子化の問題は、合法な範囲内の活動でも著者や出版社に不利益をもたらす可能性があります。そこはきちんと、なぜ問題なのか、どうすれば問題なくなるのかも合わせて、Win-Winの関係構築に向けたユーザー側からの草の根活動も必要なんだと思います。
なので、以前掲げた「書籍自炊基本宣言」を改めて広める活動なんかもしていきたいと思ったり……。

それから、主題には直接関係ない話ではありましたが、TPPによる著作権法改正を視野に入れて、変化を迫られる日本の創作システムをよりよい形で発展させていくきっかけになるのではという思いもあるとのこと。
TPPの話は詳しくするとまた長くなるので割愛しますが、確かにその通りだと思います。

一つ気になった点としては、登壇者にスキャン代行業者の関係者が居なかったことですかね。まだ業界団体もない状況なのでしょうがない点はありますが、代表者という肩書きはなくても良いから、関係者の意見は聞きたかった。

以下、シンポジウムの内容ついてまとめです。

1.会長あいさつ
 三田誠広(Myブック変換協議会 会長)

 細かい話はなく、挨拶でした。日本文藝家協会の副理事長、知的所有権委員長をつとめていて、作家の権利管理システムについていろいろ活動していることもあって会長を任されている。協議会の趣旨にはもちろん賛同しているが、実質の活動は統括の瀬尾氏が行っているとのこと。

2.Myブック変換協議会の設立について
 瀬尾太一(Myブック変換協議会 統括)

 ここが実質の本編になります。
 瀬尾氏によるプレゼンが行われました。とても重要なので詳しくまとめておきます。

  1. 日本の創作システムについての理解
     →プロとアマチュアの間に「ハイアマチュア」と呼ばれる分厚いセミプロクリエーター層があり、創作活動に大きな役割を果たしている。TPPなどで著作権が変わって、この日本の創作者システムが破壊されるだろうという懸念がある。

    .
  2. Myブック変換協議会の立場
    • 一定のルールを授けることで、業者に許諾を与えるという方向で決着をつけたい。
    • 日本の書籍は作りが良くて、いつまでも保存できる。このため沢山読む人は本棚に本があふれている。書籍自炊はあふれた本棚をどうにかするための手段であるというのが第一義である。
       例えば、老人ホームなどに移ることになったが、蔵書は持って行けないのでレンタルスペースなどに預けたりするが、そうなると読み返すこともなくなってしまう。
    • 電子化は目が不自由(老眼なども含む)な人が本を読んだりするのにとって大きな助けになる。
    • 利用者が買った本を新古書店に売り、新古書店と読者の間だけで書籍が回って著者に還元されない問題(俗に言うブックオフ問題)を解決する糸口になるのではないかと思っている。
  3. 法律上の扱いについて
     現状、著作権法30条(私的複製)によれば、個人が電子化するのであれば合法で、業者が複製すれば未許諾であれば違法。ただし、違法だから問題があるというわけでもなく、一定のルールを守ってもらえるのであれば法律上違法であるだけで実害は問題はない。逆に、合法だからと行って問題がないかと言われると、そういうわけでもない。
     例えば、非破壊でスキャンできる装置を使って私的に電子化して、原本を古本屋に流したりされるとやっぱり問題になるし、そういった機器のレンタルをするような業者が出てきても違法には出来ない。

    .
  4. 著作権の集中管理システムについて
     許諾するかどうかを集中管理する組織があった方が良い。ただし、自炊関連業者から料金を徴収したとしても、現実的に儲かるビジョンは現状ないし、将来的にも全くめどがつかないので、そういった組織を作ろうという活動はしていない。
     ただ、こういった著作権関係の問題の議論をすると、たいていが権利管理の集中管理システムが必要になるという結論になるので、電子化に限らず統合的にほとんどの書籍の権利を管理するシステムがあった方が良いのではないか、という提言はしたいと思う。

3.パネル討論「蔵書電子化の意義と課題」

 瀬尾太一(写真家)
 三田誠広(作家)
 金原優(日本書籍出版協会副理事長)
 幸森軍也(日本漫画家協会)
 石川准(静岡県立大学教授)
 モデレータ:松原聡(東洋大学教授)

――出版社、著作者、読者の立場からどのような希望があり、どのような懸念があるかについて仮想討論して対立論点してみてほしい。(松原氏)

読者の立場から(石川氏)

  • 業者を使って電子化するような読者は本来ヘビーユーザーであって、電子化して手元に置いておくことで、また新しい本を買う。いったい何がいけないのか?
  • 電子化すれば目が悪くても文字を拡大して見れるし、OCRして読み上げをすれば盲目でも書籍を読むことが出来る。また、実際にそういったことを行っている。
  • ルールを守れば著作者にも益があるし、Win-Winは可能だと思う

著者の立場から(三田氏)

  • PDFファイルが利用者に届くと、布教目的で人にコピーしたり、こっそり配布したりする人がどうしても出る。それは困る。
  • 書籍のスキャンは電子書籍としてみたら品質はよろしくないし、OCRにも間違いが多い。そのような低品質なテキストが流通するのは気分が良くない(同一性保持権)ので、どうしても必要な人(障害を持つ人)にだけ許諾するシステムが望ましい。

――これらの項目を元に議論していきましょう(松原氏)

仮想的に対立討論してもらったが、実のところ対立する意見というのはあまりないのではないか。(幸森氏、金原氏)

出版業界の人、作家、いろんな人にMyブック変換協議会について話を振ったが、方針については皆賛成してくれる。しかし、実際に許諾するかという話になると、懸念事項があるという理由で動いてはくれない。(瀬尾氏)

電子化業者の許諾も含め、著作物の二次利用をするためには、著作者のリストが必要になるが、著者の連絡先リストというのは出版社の財産であり、安易に共有したりと行ったことが出来ない。(三田氏)

――買った本を電子化するのに、出版社が関わってくるのはどうだろうというのがユーザーの立場だと思うが、出版社の権利ってどうなのか?(松原氏)

違法だから問題かというと許諾すれば問題はないし、合法だから問題がないかと言われるとそう単純なものでもない。出来れば、法律上の扱いを考える必要がない仕組み作りを考えたい(瀬尾氏)

出版社として実害があるかどうか考えていたが、現状では実害はないと考えている。蔵書を電子化したところで本が売れなくなるわけではない。ただ、日本人は著作権に関するコンプアライアンスが低いので、無限に複製できる電子化にはどうしても懸念が残る(金原氏)

貸与権センターなどに関わっていて、長年もっといろんなジャンルの二次利用を扱ってもらえないかとアプローチしているが、(儲からないから)反応は非常に鈍い(三田氏)

許諾すれば法的には問題なくなり、きちんとルール化されれば許諾をすること自体に問題はないというのが共通認識。ただ、どうしても現実に問題にならないかどうかが信じられないと言われる。これらの懸念を払拭するために「電子化したデータを流通させない」「電子化の原本を破棄する」というルールを提案したい(瀬尾氏)

――それらのルールを守ってもらうために、業者はどうあるべきでしょう?(松原氏)

そろそろ業界団体を作って、ルール化に向けて前向きな姿勢を見せて欲しいと思う。スキャン業者にも業界団体を作ることを提案したい(瀬尾氏)

一部、データを使い回しているような悪質な業者も居る。そういった業者に対して敵意を持っている著者も居て、Myブック変換協議会のシンポジウムを紹介したら責められた。良識ある業者には是非参加して欲しい(三田氏)

クラウド化してDRMで管理をしても、アクセシビリティの問題は解決しない。メタデータで追跡用IDを埋め込む等してトレーサビリティをつけて配布出来ないようにするような形にして欲しい(石川氏)

――自炊代行業者のサイトを調査したことはあるが、原本、データの破棄を歌っている業者も多い。そういった業者に呼びかけて参加してもらう時期に来ているのではないか?(松原氏)

現状、お互いがそれぞれ懸念点を持っていて、動き出さずに交渉にもついていない。このことが非常に不満である(瀬尾氏)

電子化に関しては、業務利用も含めた仕組み作りが検討されてはいる。出版社としては、個人向けだけ先に議論が先行してしまうと、業務利用制度化に悪影響が出るのではという懸念もある。また、翻訳ものや許諾を得て転載したものなど、著者の一存で許諾を出せないケースもあり、一切合切OKとするのは難しいことは理解して欲しい(金原氏)

質疑応答

――MiAU香月氏によるニコ生視聴者からの代行質問
Q:許諾料ってどれくらいになりそうですか?
A:1冊30円と報道があったが、現状のスキームを考えるとそれくらいになると思う。が、値段は後でみんなで協議して決めましょう。それで儲かるかどうかは後から考えるしかないです(瀬尾氏)

Q:権利管理団体の運用手当はどう考えている?
A:運用に必要最低限の収入しか得られないと考えている。ただ、その内容はユーザーにとってクリアーである必要がある(瀬尾氏)

Q:非破壊スキャンが実用化したとき、ルールは変わりますか?
A:非破壊スキャンでも原本流出禁止は守って欲しいと思う。そういうルール作りができればお互いに信頼が生まれると思うし、そうなって欲しいと願っている。(瀬尾氏)
A:企業には原本破棄は義務づけられないし、原本破棄しない場合は割高な料金にすると行ったルールになると思う(金原氏)

(質問ではなく香月氏のコメント):「出版広報センター」なる組織から代行業者に賛同した作家に忠告文書が届けられるといった事件があった。代行業者を一方的に悪者にするような議論は良くないと考えている。その点に関してはぜひ配慮して欲しい。

――その場にいた名前も名乗らなかったDQN
Q:許諾を得てスキャンしてる業者おらず、全てコンプライアンス意識がない。そんな業者を信用できるのか?信用なんて出来ないですよね?だって違法なことやってるんですから。
A:それはあなたの勝手な思い込みです。あと、ここで議論しているルールというのは法律の話ではないです(瀬尾氏)
A:内部的には業界団体を作ってもらって、第三者による監視団体を運用するといったことも議論している(松原氏)

――フリージャーナリスト西田氏
Q:話が広がりすぎている気がする。個人ベースのビジネスと、業務用も含めたビジネスと切りはなして議論出来ませんか?
A:切りはなしは出来るが、最終的には統括してやった方が良いと考えている(金原氏)
A:個人ベースの話に絞って考えているが、分けなくても整合性はとれると考えている(瀬尾氏)

Q:電子化したデータを配布させないルールとは具体的にどのように考えていますか? DRMの仕組みなどは検討されていますか?
A:電子データは個人の所有物で、再利用したければその為の対価を払ってやっていただければ良い。技術的に制限を加えるというつもりはない(金原氏)
A:ルールを守ってもらえることを信用するしかない。世界ではどうか知らないが、日本ではそれが不可能ではないと考えている(瀬尾氏)

――朝日新聞赤田氏
Q:協議会の活動に対して、出版社は徴収分配システム組織作りも含めて積極的に協力する立場なのか、それとも反対はしないという程度の立場なのか?
A:条件次第です。許諾料もそうですが、電子データ利用に関するユーザーのコンプライアンス意識、業者のコンプライアンス意識、二次利用システム全体との整合性など。そこさえ整えば積極的に協力できると思う(金原氏)
A:そもそも出版社は複製権を持っていない。蔵書を電子化するまでしか考える必要はなくて、出版社が出てくるのはその先の話だと思う。(松原氏)

Q:いつまでにどのように実現していこうと考えているのか?
A:スキャン代行業界がなくなる前に、つまり、今行われている裁判に決着がついて業界がどうにかなってしまう前になんらかの進捗を見せたい。(瀬尾氏)

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2013年04月28日 6時11分 (#2371921)

    株式会社実践の腰原です。と間違いなく申し上げたのですが、マイクに入っていなかったのかもしれません。scanbooks.jpという日本で初めて自炊関連のサービスを始めた者です。瀬尾先生は私のことはご存知です。協議会のHPやfacebookに書き込みをしているので、そちらもご覧ください。

  • by Anonymous Coward on 2013年04月28日 6時35分 (#2371922)

    先ほどコメントした腰原です。どこにお勤めでどんなお仕事をされていますか?自炊代行の件については、どんな関わりを持っていらっしゃいますか?

    • プロフィール、および日記本文にあるリンク先を探せば10分でわかりますよ。

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      親コメント
      • by Anonymous Coward

        腰原です。
        ご返信頂きまして有り難うございます。
        でも、・・・難しかったです。10分いろいろ探したのですが、お名前はわかりませんでした。

        • by Anonymous Coward

          名前を知ることはそんなに重要なことなのですか?

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※ただしPHPを除く -- あるAdmin

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