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火星

akiraaniの日記: デジタルコピーと著作権

日記 by akiraani
前回エントリの完成版

 Winnyにしろ、CCCD問題にしろ、私的録音補償金にしろ、問題の根本はデジタルコピーが従来で言うところの複製と使われ方が違うという点に尽きるのではなかろうか。

 例えば、検索用サーバを日本国内に設置可能にの問題にしてもそうなのだが、根本原因はアナログデータに対する複製権の扱いをそのままデジタルに持ち込んでいることにある。

 アナログ著作物とデジタル著作物の一番の違いは何かというと、「デジタルの世界には移動という概念がない」ことにある。一般的に移動と思われる操作を行った場合でも、実際には移動先にデータの複製を作成してから複製元データを消すという動作になる。つまり、頻繁に複製されては削除されるという動作を実は内部的に行っているということになる。
 他にも、表示処理等でアクセスが高速にできるメモリへデータを読込んだりすることもあれば、冗長処理のために複数のクローンを作成するなど、内部的に複製を行っているケースは多々ある。

 これらの複製について著作権法を厳密にあてはめれば、著作者の許可なしに行ってはいけないことになる。もちろん、私的複製権など、問題がないケースもあるが、ネットワーク越しの作業になるととたんに雲行きが怪しくなる。例えば、録画ネット事件などがわかりやすいだろうか。やっていることは遠隔地でのタイムシフト再生でしかないのだが、現状の著作権法では違法という扱いになってしまう。
 他にも、私的録音補償金問題というものがある。著作権法において、著作権者は自らの著作物の複製を禁止することができるが、例外として個人使用もしくはそれに準じる用途において私的な複製が認められている。デジタルコピーは私的複製でも製品版と変わらない品質の著作物を得ることができるため、それに対する補償としてメディアの販売価格に対して上乗せ課金されているのが私的録音補償金である。特定の団体に所属しなければ還元を受けることができない上に、課金元がメディアであるためすでに正当な対価を支払っている、さらに著作物を一切録音しない場合でも一律に課金される。一応、著作物を録音録画しない場合のための返金制度はあるが事実上機能しておらず権利者と消費者の双方に不平等を強いる制度として問題になっている。

 もともと、著作権法で著作財産権が保護されるのは著作者が創作活動において正当な対価が払われることを保証するための仕組みである。なぜそんなことをする必要があるかというと、文化の発展のために必要だからだ。創作活動に対する対価が支払われなければ、創作者が生活することもできないし、創作意欲が著しく失われることに直結する。
 書籍にしろ音楽にしろ、著作者が創作活動にする対価を得るためには、ほとんどの場合創作物を流通に乗せそこから対価を回収する必要がある。出版社、レコード会社が著作隣接権を持つのはその流通経路を維持することが文化の発展に不可欠だからだ。しかし、デジタル技術とネットワーク技術の発展によって創作物の流通経路が出版社やレコード会社に頼らずとも容易に確保できるようになった。対価を回収する仕組みも近年整備されつつある。
 例えばiTunesStoreの台頭が良い例だろう。購入した楽曲を音楽CDにできるなど制限はもっともゆるく、いわゆる私的複製がやりやすいことが特徴である。そのiTunesStoreが商売として大きな成功を収めていることは、私的録音があっても著作権者の利益は損なわれないことを示した実例と言ってよいだろう。他にも、CCCDの失敗など間接的にではあるが利用者による複製が必ずしも著作権者の利益を損なうとは限らないことを示した例はいくつかある。

 いわゆるMP3プレイヤーの流行で、音楽というのは持ち歩いていつでもどこでも聴くことができる存在となった。最近になって動画の再生が行えるポータブルプレイヤーも増え、録画した番組を休憩中に見るなんて文化が生まれるのも時間の問題だろう。通信インフラが発展すれば、もっと新しい可能性、新しい文化の発展が期待できるだろう。しかし、現行の著作権法のような何でもかんでも複製禁止とする制度では、結果として文化の発展も妨げてしまう。
 著作権法は「文化の発展に寄与することを目的とする」法律であるはずだが、これでは本末転倒である。そろそろ複製という行為の定義について見直すべきなのではないだろうか。
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ナニゲにアレゲなのは、ナニゲなアレゲ -- アレゲ研究家

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