akiraaniの日記: 著作権問題の基礎知識
著作権問題の話をするときに、必要になる基礎知識、用語なんかを簡単に説明するエントリを作成してみるテスト。資料としておいて置くつもりなので、突っ込み歓迎。
著作権の基本的な考え方について
著作権と言うのは、ほとんどが何かを禁止する権利です。たとえば複製権であれば複製を作成することを禁止する権利があるということです。あくまで権利なので、行使しなければ明示的な違法行為にはなりません。
権利を行使するにしても、訴えに出たり現行調査をしたりとコストがかかるのが普通なので、著作者のデメリットにならない複製は普通は黙認されます。宣伝になる、損害を与えないから大丈夫という話はここからきますが、侵害かどうかを決定するのはあくまで著作権利者です。金銭的な損害がなくても、精神的な問題や立場上の問題から権利を行使するケースもあります。
著作権の分類
著作権は、著作者本人が持つ権利と、第三者がもつ権利に分けることができます。
著者本人が持つ著作権には大きく分けて二種類あります。
- 著作人格権
著作者が持つ著作権の中でも、第三者に譲ることができない権利のことを著作者人格権といいます。公表権、氏名表示権、同一性保持権の三種類があり、この中で一番問題になりやすいのは同一性保持権です。
同一性保持権は勝手に改変することを禁止する権利です。替え歌などは同一性保持権の侵害とされる可能性があります(※1)。また、コミュニティサイトの規約ではユーザーが著作権を持つ書き込みのサマリ表示などで抵触する可能性があるため、同一性保持権を行使しない旨の条文(※2)があることが多いです。
※1おふくろさん事件が有名です。
※2規約にまつわるトラブルではmixiの規約改変事件が有名です。
- 著作財産権
著作財産権にはたくさんの種類がありますので、よく問題になる権利、複製権と公衆送信権のみ説明します。
一般的に著作権侵害として認識されているものは大半が複製権の侵害です。
複製権は、著作者に無断での著作物の複製をすべて禁止することのできる権利ですが、いくつか例外があり、私的な用途での複製の場合は使用者による複製が許可されます。いわゆる私的複製ですが、私的複製にあたらない例外もいくつかあり、ダウンロード違法化の話題も私的複製に対しての制限という形になります。
複製権の侵害について裁判などで争われる場合、複製を行った対象を末端ユーザーではなく業者が行っているとして訴えられる(※3)ことがほとんどです。このため、私的複製かどうかが裁判で争われることはほとんどありません。
公衆送信権はいくつか種類がありますが、ネット配信に関する権利は送信可能化権といいます。これは送信可能な状態に置くことで成立するので、実際にアクセスがなかったとしても問題になります。また、私的複製のような例外規定がないため、厳密に適用すれば知らないまま侵害してる人がたくさん引っかかってしまう危険度の高い法律です。また、パスワードなどでロックしていたとしても厳密な個人認証手段ではないため公衆送信とみなされるという判例があります。
※3ユーザーの行った行為を場を提供した業者が行ったと解釈するカラオケの法理という判例があり、それを適用した事件としてファイルローグ事件、録画ネット事件、MYUTA事件などが有名。逆にカラオケ法理の適用が却下されたまねきTV事件、ロクラク事件もあります。
著作者以外が持つ権利
著作者以外が持つ著作権はいくつかありますが、実演家の権利、レコード製作者の権利、出版権について説明します。
実演家の権利は、音楽を演奏した人、歌った人の権利です。著作者と同様に人格権として氏名表示権、同一性保持権を持ちますが、公表権はありません。また、財産権の複製権、送信可能化権については著作者の権利と同様ですが、放送での二次利用に関しては商業用レコードの二次使用料を受ける権利という著作者に比べて制限された権利になります。
移譲に関しても扱いは著作者と同じで、氏名表示権、同一性保持権は第三者に移譲できませんが、複製権、送信可能化権も著作者と同様に第三者に委譲することができます。ただ、著作者の場合と違い、複製権、送信可能化権のJSARACなどの著作権管理業者への委託は行われていません。
なお、商業用レコードの二次使用料を受ける権利(他に貸レコードについて報酬を受ける権利)のみCPRA(実演著作権隣接センター)(※4)が管理しています。
※4他に、貸レコードについて報酬を受ける権利、私的録音補償金の実演家への分配を行っています。
レコード製作者の権利は、主にレコード会社の権利です。ただし、自主制作などで録音・マスタリングを著作者や演奏家が行った場合はその当人の権利になります。権利の内容は人格権がない他はほぼ実演家の権利と同じです。
移譲に関しても扱いは同じで、法律上は複製権、送信可能化権も著作者と同様に第三者に委譲することができますが、JSARACなどの著作権管理業者への委託は行われておらず、商業用レコードの二次使用料を受ける権利などの分配はRIAJ(日本レコード協会)が行っています。
まとめると、一般的な商用音楽を複製権、送信可能化権にかかわるような利用を行う場合、
- 著作者の権利(作詞者、作曲者)→JASRAC等の著作権管理会社に規定の申請を行って規定の料金を支払う
- 実演家の権利(演奏者、歌手)→個別に交渉して個別に契約する
- レコード製作者の権利(レコード会社)→個別に交渉して個別に契約する
という三種類の権利保持者それぞれに対してのアプローチが必要になります。
なお、テレビやラジオでの放送で利用する場合は手続きが違っていて、一般的には
- 著作者の権利(作詞者、作曲者)→JASRAC等の著作権管理会社との包括契約
- 実演家の権利(演奏者、歌手)→CPRAとの包括契約
- レコード製作者の権利(レコード会社)→RIAJとの包括契約
を放送局が行っています。
書籍に対して出版社が持つ権利が出版権です。
立場的にはレコード製作者の権利と同じかと思われがちですが、内容はだいぶ違います。他の出版社からの出版を差し止める権利があったりしますが、その代わり登録が必要で継続して出版する義務があります。また、複製権、公衆送信権は持っていません。
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