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akiraaniの日記: 電子書籍のイノベーションはコンシューマブックスキャナが起こす

日記 by akiraani

注:この話はあくまで妄想です。

 日本ではシグマブック、リブリエと大失敗してしまった汎用電子書籍だが、米国ではKindleの成功でだいぶ一般化が進み、規格統一も進んでいるようだ。
 しかし、日本では一度大火傷してしまった過去があるため、大手出版社も電子書籍にはなかなか本格参入しようとしないだろう。ネット書店や新古書店といった書籍流通網がもともと優れている上に、出版社が価格面でのアドバンテージを電子書籍に持ち込まそうとしないので、そもそも電子書籍を読むという習慣自体が根付かないのが大きい。
 そんな日本で、電子書籍が流行るとすればどんな状況だろうかと以前からよく妄想していたのだが、今自分の中で最も有力な仮説は、ブックスキャナのコンシューマ化がトリガになるのではないかというものだ。

 大まかなシナリオとしては、こうだ。

  1. 安価で手軽なブックスキャナが開発され、重度の読書家がアーリーアダプタとなり一般家庭にブックスキャナが普及する。
  2. 取り込んだ書籍を読むための読書専用デバイスが海外から流入し、出回り始める。
  3. 雑誌類の取り込みが家庭で行われるようになり、マンガ単行本の販売に影響が出る。
  4. 単行本の売り上げ減で対応を迫られた出版業界が、やむを得ず汎用の電子書籍に本格参入。
  5. 出版業界の動きを受けて、国内メーカーが電子書籍専用端末に再参入。

 ポイントは雑誌のアーカイブ化が家庭で行われるようになること、だ。安価で手軽に書籍を取り込もうと思うと背表紙を裁断してスキャン後は書籍を廃棄する必要があるが、もともとマンガ雑誌類は時期が過ぎればさっさと捨ててしまうものなので抵抗はほとんどないはず。そして、手軽に取り込んでおいておけるようになれば、単行本を買わなくなる人が少なからず出るだろう。レンタルCDをリッピングするのと同じ感覚だ。

 もともとマンガ雑誌は雑誌本体は宣伝媒体としての性質が強く、主な利益は単行本であげるというビジネスモデルだった。そのシステムが壊れてしまう以上、何らかの対処を迫られることになる。
 今となっては私的録音録画補償金のような制度を開始するのも難しいし、現状の著作権法ではブックスキャナを違法装置として訴えることも難しい。紙の書籍にはDRMのようなコピーガード処理を入れるのは技術的に不可能だし、そもそもDRMではうまくいかないことは音楽業界のたどってきた状況を見れば明らかだ。
 そうなってくると、出版業界が取れる対処方法は限られてくる。
 ひとつは、高付加価値路線。付録やDVD、フィギィアなどの電子化して取り込む意味がないおまけをつけてプレミア商売にシフトする方法だ。一点あたりの販売数の低下からおまけ付き単行本が最近増えてるが、その動きがさらに加速すると思われる。

 もうひとつが電子書籍への参入だ。雑誌そのものを紙媒体からWebやネット配信などの電子媒体に切り替えれば、単行本の需要を維持することも可能になる。高付加価値路線も組み合わせて、単行本も高機能電子書籍化(音声、簡易アニメーションなどを追加する)するという路線もあるだろう。
 電子書籍の普及は業界全体での取り組みが必要不可欠で同時にリスクも高く、現状は電子化はほんの一部でしか進んでいない。が、現行のビジネスモデルが先細りであると誰もが理解するにいたればさすがに業界が一丸となって対応に走るだろう。

 ちなみに、裁断取り込みが増えると出版業界以上に新古書店が大打撃を受けてしまう気がするが、これはもうどうしようもなくなる気がする……。

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吾輩はリファレンスである。名前はまだ無い -- perlの中の人

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