akiraaniの日記: 第4回MMD杯について3(受賞作特集)
ついに第4回MMD杯閉会式も終わり、毎回出てくる締め切りに間に合わなかった遅刻組もあらかたそろったようです。
全体的な話は前回したので、今度は個別の作品についてピックアップしていきたいと思います。というわけで、今回は受賞作特集です。
まあ、受賞作については閉会式動画や公式Wikiに一覧があるのでそこからたどってみてください。
受賞作はやっぱりおもしろいのばかりそろってますね。せっかくなので個人的な感想だけでなく、ちょっとした解説もあわせてご紹介。
総合部門
総合優勝:Chaining Intention【PV】/@まさたかP
VOCALOID殿堂入りの人気曲「Chaining Intention」にあわせたMMDによるミュージッククリップ風のPV(プロモーションビデオ)。
使用しているLat式モデルが表情がかわいく人気のユーザーモデルだというのもありますが、MMDの動き、演出や構成なども含めた総合的な完成度がおそろしく高い。ダンスPVはMMD作品の王道ジャンルですが、ここまでくるとMMDであることを意識させませんね。いやほんとすごい。
準優勝:ニコニコ天国と地獄/ポンポコP
ニコニコ動画サイトの左上に表示されるGIFアニメアイコンと、任天堂DS向けのゲーム「赤ちゃんはどこからくるの?」のPVに使われた天国と地獄のアレンジ曲を合わせた作品。
ネタチョイスやたたみかけるような怒濤の演出構成、ゲキド街をはじめとする舞台アクセサリもすごいですが、真骨頂はなんと言ってもリアル以上のリアリティを持った豊富なアクションモーションの数々。機械のような不自然さがないのに、実写ではあり得ないキレのある動きは商業作品にも負けない一流エンタメと言えるんじゃないでしょうか。
敢闘賞:ミクトラ/ツブラヤP
MMDユーザーモデルで総勢30体にも及ぶウルトラシリーズの怪獣を再現し、一世を風靡した「もってけセーラー服」ダンスを踊らせるというMMDでなければ絶対に作れない夢の映像です。
いやー、数の迫力もありますが、怪獣たちがあれほどまでにキレのある動きで踊るとは……。特に分身バルタンによるチアダンスと2番の全員集合しての「Beat It」は圧巻(比較版も必見です)。絶妙に織り込まれたウルトラシリーズネタ、怪獣とベースモデルの造型の違いをもろともしないダンスの完成度、作り込みの深さには作者のウルトラシリーズへの深い愛が感じられます。
テーマ1「記念日」部門
優秀賞:卓球/ネギ焼きP
鹿男あをによしのエンディングテーマをBGMにリアル頭身のせんとくんと武者甲冑を着込んだ初音ミクがテニヌもびっくりの超人卓球を繰り広げて、初音ミクが1点取る動画。
注目は第4回MMD杯随一の演出かっこよさ。動きの速いシーンとストップモーションを実に効果的に使い、カメラワークや残像なんかのエフェクトもすばらしいの一言。作者のオリジナルモデルの迫力もあり、シチュエーションはとてつもなく不条理なのに勢いで納得させれてしまう怪作です。
満員御礼賞:自作モデルで1万人ライブ/針金P
これもある意味ダンスPVの一種と言えないこともないですが、まあダンスモーションも曲も既存のもの、モデルも作者オリジナルですがすでに発表されているもので、目新しい点は実はありません。
最大のポイントは棒人間というシンプルなモデルであることを逆手にとって、数で勝負したというところ。ある意味、MMD史上最大の力技ですね。暗い観客席に無数のサイリューム(一部へんなのあり)が乱舞する様子はまさにライブDVD映像そのもの。ちょっとした感動すら覚えます。
ハートフル賞:恋練 in Xmas/山門P
合間合間にものすごい数のネタがこっそり織り込まれていて、その細かさもすばらしいんですが、賞のタイトルからわかるとおり実に心温まるお話です。これはシナリオの勝利ですね。超展開不条理モノと思わせて置いてまさかの超展開返し。
まあ、その若干ひがみのよーな心境にならなくもないですが(笑)、青春ラブストーリーとしても楽しめてしまう良作です。
テーマ2「世界」部門
優秀賞:春香さんにjubeat(天国と地獄)をやってもらった/ああああ
これもかなり変則的ですが、ダンスPVということになるんですかね。床の一部が昇降するステージアクセサリを使ってjubeatという4×4のパネルを押す音ゲーを再現するというアイデアは秀逸です。
ただ、組み合わせの妙はもちろんありますが、一番すごいのは間に仕込まれた大量のニコニコネタでしょう。まさしくニコニコオールスターと言えるメンツが出てきます。ただ、あまりにネタが細かいのにどれも一瞬しか出てこないのでネタを理解するために知識だけじゃなくて動体視力まで要求されてしまいますが。ちなみに、ネタ解析に挫折したらニコニコ大百科の解説記事がついてますのでこちらをどうぞw
MMDxWORLD賞:すばらしき新-MMD-世界/riotmos-P
ナムコ×カプコンのデモムービーをMMDで再現した動画。動画自体の出来もさることながら、ジャンルを問わずいろんなバリエーションのモデルがたくさん登場して元ネタにふさわしいMMDオールスター動画になっています。
何よりおどろくべきなのは、作者の方が海外の方だということですね。MMDは基本日本語のみのツールで、オープンソースプロジェクトなんかと違い翻訳活動みたいなことは全くやってないはずなんですが、MMD杯のことを知って参加するまでのファンが海外のもいらっしゃるんですねぇ。すげぇ。
無限連鎖賞:ドミノ/極北P
物理演算モジュールを使って、MMDでドミノをやってみた作品。
これは本当に見事の一言。ドミノが倒れて広がっていく様子は実にリアルに再現されています。登場したオブジェクトの数では「自作モデルで1万人ライブ」を上回るんじゃないでしょうか。しかも、おびただしい数のドミノにそれぞれ違うテクスチャが貼られ、全部倒すと一枚の絵になるという。あんなギミックは現実世界のドミノじゃあほぼ不可能でしょうね。
そして何より感動したのは、ドミノのに貼られたテクスチャがそれぞれMMDやMMD作品の画面だということですね。アップだけでも俯瞰だけでもとらえきれない細かさ、いったいどれだけの手間がかかったのか想像もつきません。
テーマ3「M」部門
優秀賞:東方でマイケル~Smooth Criminal~/danchoP
テーマであるMに引っかけてマイケルジャクソン、そしてキャラは東方、ツールはMMD。マイケルジャクソンの位置にいる霧雨魔理沙のモデルは第3回MMD杯のあと、物理演算モジュールを使ってスカートのひらひらを再現するノウハウが固まりかけた頃に登場した人気モデルです。あのロングスカートであのアクションは実際には不可能でしょうね。
それにしても、さすがにマイケルジャクソンをトレスしただけあってキレのある動きですね。まあ、キレがありすぎて所々物理演算で限界を超えたところがあるようですが、それにしたって良くできてます。
ミニドラマ賞:休日のネルさん/ドロヌマP
MMDのボーカロイドファミリーによる無声ミニドラマ。台詞も文字による解説もほとんどなく、表情やアイテムですべてを表現し、それで見ていてコメディとして楽しめるというはエンターテイメントとしては相当にレベルが高いですよ。
とくに表情、間の演出、効果音のセンスがすごく良い。ネタのインパクトにも全く頼ってないし、このクオリティのものがたくさん作れるならお茶の間コメディとしても通用しそうです。
モーション賞:ピアノ・レッスンで踊り/あおれん
モーション賞を冠するだけあって、オリジナリティあふれるユニークなダンスモーションが光る作品です。
背景もなく、さほどスピードがあるわけでもないのに不思議な躍動感があり、重力が軽くふわりとした感じで微妙にアンバランスなところが独特の世界を作り上げてます。
特別枠
二重の喜劇賞:りんちゃんが独裁者/ハバネラP
:地球とダンス/pepi
映画「チャップリンの独裁者」の名シーンを再現した作品。まさかのネタかぶりで、しかもどっちも甲乙付けがたいハイクオリティという、これは一種の奇跡と言えるんじゃないんでしょうか。
原作とこの2作の3つをいっぺんにならべた比較動画もありますので、この2つを見たらこちらも見ておくことをおすすめします。ほんと良くできてますねぇ。
春の新番組賞:コンペイトウ星【アニメOP風PV】/ショ大河P
MMDで映像作品を作ったら……という体で作られたPV。カット割りや表情の見せ方が確かにアニメのオープニング風で、こういうのありかもと思わせる完成度です。
MMDで映像作品が出来るかも、という可能性を見せてくれたという意味でMMDの未来を左右するかもしれないですね。
超効果賞:とある偶像の天海春香-HARUKA- 【デビュー2周年記念】/G様P
MMDを使ったとある科学の超電磁砲第二期OPのトレスMAD……なんですが、MMD以外の部分でも大変な手間暇がかかった力作です。って、第二期OPって、1月に入ってから出てきたモノなのに動画の投稿日は2/12……まじですか。技術もスピードもすごいですな。
もともとMMDは軽さを売りにしたツールなので、MMDを道具の1つとして使って仕上げるというのはけっこう珍しいです。確かに他のツールも駆使した方が完成度は上がるし、もっと増えるといいですね。
選考委員部門
ささくれ賞:papermoon/動画:koishi(wsP)絵師:アルカ
MMDお絵かきツールという、MMD上に画像を表示させるツールだけを使って作られたPV。3DのはずのMMDであえて2D画像を並べるというのは一見手抜きに思えますが、淡い色使いのイラストで作られた世界観は通常の3Dモデルではまだ再現できない世界です。作品を見てみると非凡なセンスが感じられると思います。
セバスチャン賞/ノヤマコト賞:UTAU事件簿-All Starts are the "M"-/inaphon
VOCALOIDシリーズではなく、フリーの歌声合成ツールUTAUとそのイメージキャラクターを使ったミニドラマ作品。MMDドラマ作品は台詞には字幕や吹き出しを使うケースが多いですが、UTAUで全部しゃべらせているというのはすごい。さすがに字幕無しだと聞き取りにくい箇所がありますが、細かい表情なんかの演出も面白い。
UTAUシリーズはVOCALOIDがお手本ではありましたが、MMDの世界では完全にユーザーが作り上げた一種のシェアワールド。しがらみのない自由さも魅力と言えそうです。
Yumiko賞 ボーカロイドM-1ぐらんぷり ミクandハク/ネコ耳P
初音ミクと弱音ハクで漫才をするという作品ですが、基本歌う機能しかないVOCALOIDを実に自然にしゃべらせてます。MMDを使ったリアクションや表情も良くできていて、普通に漫才として楽しめます。
ニョホホ賞 にんぎょひめ【巡音ルカ】/ahiru
童話の人魚姫をベースにした……というか元ネタにしたコメディドラマ。ぼけと突っ込みを中心としたギャグ、表情、ネタ、がテンポ良く織り込まれてます。超展開に見えてあとできちんと伏線として拾ってストーリーをまとめてあったりと完成度もかなりのもの。これは素直に楽しめます。
というわけで、すべての受賞作について一通りさらってみました。
次は受賞から漏れてしまったお気に入りや良作について拾ってみたいと思います。
第4回MMD杯について3(受賞作特集) More ログイン