akiraaniの日記: 自炊についてのまとめ 4
MiAUのネットの羅針盤での自炊特集について、予習もかねてまとめておこうかとおもうのでつらつらと。
自炊のメリット
書籍の電子化について否定的な人は、本の虫がなぜ電子化をありがたがるのかを理解していないのではないかと思う。
iPad以降のブームで自炊を知った人の大半は電子化することで何かが変わると思っているかもしれないが、実は読書体験に関する部分は大して変わらない。少なくとも、良くはならない。
積ん読は電子化しても積ん読のままだし、書いてある内容を知識として頭に詰め込むにはきちんと読まないといけないし、ライブラリとして活用するためにはどこに何が書いてあるかを把握しておく必要がある。そしてディスプレイで読むとモノクロだったりバックライトのせいで目が疲れたりする。
つまり、今の環境では、電子書籍の使い勝手は紙の書籍とさして変わらないか、もしくは劣るものであると認識すべきだ。
他にも、紙の本独特の読書体験や、インテリア感覚で書棚に本を並べておくことに価値を感じる人も居るのは確かで、そのような人にとっては電子化することで失われるものが多くあることは否定しない。
しかし、いわゆる本の虫と言われる人々にとって、書籍電子化の一番のメリットは物理的な書棚空間の圧縮軽量化だ。
たとえば、一般的なコミックスを電子化すると、解像度や圧縮率にも寄るがだいたい30MB程度のファイルになる。単純計算で32GBのSDHCカードに1000冊、1TのHDDなら軽く3万冊。
ちなみに、文庫本が1500冊あると6畳間の壁一面が本でびっちり埋まる。うちには推定で約3000冊ほど文庫本あるが、おかげで寝室の空きスペースが相当浸食されている。それが手のひらサイズのHDDに収まるというのがどれだけありがたいことか……。
このメリットに比べれば、電子的な付加情報だのメディア特性の違いなんてのは本当に些末な問題でしかない。これが実感できるか出来ないかで、自炊に対する意識は大きく変わってくるはずだ。
自炊と権利問題
権利問題、特にデジタルでの私的複製の問題は音楽業界という先例があるので、それをベースに考えるとわかりやすいだろう。
音楽業界で主に問題になったのはCDの貸し借りによる私的複製と、レンタルCDからの私的複製。特に、レンタルCDのコピーはレンタルCD店内にダビング装置が置かれるなど実際のCDの売り上げに影響が及びそうなサービスが登場し、最終的には私的録音録画補償金制度と、公衆複製サービスによる私的複製の制限の導入という形で対処された。
これを書籍の自炊にあてはめて考えてみると、少なくともレンタルCDのコピーの例に自炊は当てはまらないことがわかる。なぜなら、現状の自炊は原本の破壊を伴うためレンタルサービスの書籍をスキャンすることができないからだ。自炊の森のような無断複製を主目的とするような管理をしない限り、使い回しは物理的に不可能と言って良いだろう。
残る問題は複製後のデータのコピー。自炊データを読むという行為は今のところほとんどが個人的な範囲に絞られており、私的複製の中でも比較的広いレベル(学校の友人など)でデータを共有しようという習慣はほとんどない。おそらく、ネットワーク社会になればなるほどそういったローカルストレージメディアの交換は行われなくなるだろう。かといって、ネットワーク上で共有するとそれは送信可能化権の侵害になるので違法行為として取り締まることが出来る。
逆に、原本が破壊されることで新古書店への流出がなくなるため、いわゆる権利者への経済的損害というのは実質ないか、むしろ得になるのではいかと思われる。
このため、違法配信さえ取り締まることが出来れば今のところあえて私的複製の制限なの法的対処の必要はないと考えてよいだろう。
それから権利回りの大きな問題点として、電子書籍の法的な権利体系が未整理であることもあげられる。電子書籍に関しては既存の書籍における出版権は及ばないというのが一般的な見解のようだ。ということは、音楽で言うところのレコード製作者等の権利(いわゆる原盤権)のような出版社の権利が存在しないことになる。
つまり、法を変えて対処するためには現行法を大きく変える必要がある。これは一朝一夕でできることではない。仮に私的複製補償金のような制度を書籍でも運用するとなった場合に、法的な権利体系が未整備であることは大きな障害になるだろう。
ただし、原本が破壊されずにスキャンが可能になると、図書館の書籍を借りてコピーするなどある意味レンタルCDよりもよほど看過しがたい状況になる可能性が高い。さすがにそうなれば何らかの形で法的対処が入るだろう。破壊なしの自動スキャンは現状技術的に難しく、また大掛かりな装置が必要になるので一般に普及するまでにはまだまだ時間がかかりそうではあるが、将来的な可能性として留意しておく必要はあるだろう。
自炊を問題行為にしないために
少なくとも書棚圧縮のための自炊については、利害関係において出版社と共存できる。この1点において、自炊の未来は明るい。今現在違法じゃないからといって、将来的に合法であることは保障されないわけだが、少なくとも権利者と消費者の利害関係が一致する限りそういう動きは出てこない。
つまり、今現在の法律で違法かどうかよりも、クリエイターやその関係者に迷惑をかけないことが肝要だと言える。
というわけで、書籍自炊の心得を書き出してみた。
- ひとつ、電子化した原本は捨てる。再利用しようなどとせこいことを考えるな。
- ひとつ、電子化したデータは家族にも友人にも配らない。データは自分一人だけのもの。
- ひとつ、他人が電子化したデータはもらわない。欲しければ自分で買うべし。
- ひとつ、良いと思った本ほど電子化すべし。電子化は最も優れた本の保管方法なり。
- ひとつ、電子化で得られるものは物理的な空間なり。本の中身は増えも減りもしない。
この心得は隗より始めよの精神で実践中。他人に強制するつもりはないが、自炊をしようと思ってる人はぜひ参考に。
書籍の電子化≠電子書籍 (スコア:0)
>つまり、今の環境では、電子書籍の使い勝手は紙の書籍とさして変わらないか、もしくは劣るものであると認識すべきだ。
ここは「電子化された紙の書籍の使い勝手は~」の間違いだよね?
電子書籍の使い勝手は、紙の書籍とは全く別物になるから。
Re:書籍の電子化≠電子書籍 (スコア:1)
ああ、もとの体裁/版組みを守る場合と文字ストリームとして体裁制御をOn/Offできる(フロー表示とかできる)だとまた色々違いますね。
あと、単純な自炊だとOCRしても精度の問題もあって、文字としての検索性とかあんまりないかな...(未経験)
そういう意味でも出版元とかがビジネスチャンスとしてちゃんとやってくれるほうがWin-Winなんだけどなぁ...
M-FalconSky (暑いか寒い)
Re: (スコア:0)
OCRの精度は結構上がっているとは思います。
ただ
専門書で半角英数字+全角だと(特に半角の書体が変わっていたりすると)
むりやり全角で読もうとしたりするのでいまいちです。
個人的には「後で(もしかしたら)読む」レベルで保存しているので
検索性は求めずに、全部画像として読み込んでいます。
# その場合、本によっては数100Mになるので、2TのHDDに1000冊くらいですかね
# (さらに2台で保存してるからさらに倍!)
## そのHDDさえ埋まってないから、うちの電子書籍は100冊くらいかな<サボりすぎ
Re:書籍の電子化≠電子書籍 (スコア:1)
一桁間違ってますよ(^^;
1Tは1000Gなので、2TのHDDに1冊平均200Mの書籍をいれるなら1万冊入るはず。
ちなみに、フルカラーで500ページくらいのムック本を取り込むと確かに数100Mくらい食いますが、カラーではないページがきちんとグレースケールで取り込めていればだいぶ圧縮できますよ。
まあ、そういう本が1万冊もおけるんだったら、コミックスなら軽くその4~5倍はおけるはずですが。
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