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akiraaniの日記: 発電所の仕組みと次世代エネルギーの方向性 12

日記 by akiraani

まず、発電所で行われている原理を軽く説明しておきます。
火力、水力、風力、原子力といった発電所では、電磁誘導の原理で発電が行われます。
では、電磁誘導とはなんぞや。Wikipediaの電磁誘導の項目を見てみましょう。
はい、いきなりファラデーの法則の数式からしてわけわかりませんね。大学のときにいろいろ習ったんですがもうとっくに忘れてるので、細かい説明は飛ばします(ぉぃ
結論から言うと、この電磁誘導の原理によって電線をぐるぐる巻いて作ったコイルのそばで磁石を回転させると、電気が発生するわけです。もうちょっと単純化すると、回転する力は電力に変換できるんだよ、ということです。この回転力→電力の部分は現在100%に近い効率が実現されています。
大事なことなのでもう一度繰り返します。発電所というのは何らかの手段で回転力を発生させ、その回転力を電力に変換しています

では、発電所ではこの電力の元になる回転力をどうやって発生させているのでしょうか。
水力や風力はわかりやすいですよね。もともと風の力だったり水の力だったりするものを、プロペラで受けて回転力に変えています。
では、火力や原子力、石炭や地熱はどうなんでしょうか。
これは蒸気タービンと呼ばれるものを使っています。水を加熱して沸騰させると、体積が1000倍以上に膨張します。膨張して体積が膨れ上がった水蒸気をタービンと呼ばれる羽根に吹き付けることで回転させます。加熱した水蒸気は一旦冷却して水に戻し、再び過熱して蒸気にしてタービンを回す力に変えます。
このように、気体、液体の熱膨張を利用して熱エネルギーから力を取り出す仕組みを熱機関といい、熱機関の効率はカルノーサイクルという考え方で求めることができます。
はい、これも細かい話はWikipediaのカルノーサイクルの項目に説明があります。
例によってややこしいので説明をすっぱり省いて結論を言うと、加熱したときの最高温度と冷却したときの最低温度の差が大きければ大きいほど効率は良くなります
より高温にするためにはより大きなボイラーを使いより大火力で加熱する必要があります。このため、より効率の良い発電所を作ろうと思うと、より高温に耐えることのできる大型の発電設備が必要になるわけです。
しかし、それでも限界があり、現在最も効率が良い火力発電所でも最高温度が摂氏600度程度、熱効率にして50%にも届いていません。理屈の上では温度が高ければ高いほど効率も良くなるんですが、残念ながらそれだけの温度に耐えるボイラーが存在しませんので、現在の技術力ではこれが限界です。

さらに、熱の発生方法で発電所をいくつかの種類に分けることができます。

地熱発電や太陽熱発電では自然にある熱を直接利用しています。もっともローリスクで安価な熱源ですが、残念なことに自然熱源は安定した出力を得ることが極端に難しく、発電可能なポイントが極端に限られていたり、トータルのコストはさほどよくなかったり、発電量が運任せだというさまざまな難点があります。これは風力や水力に関しても似たようなことがいえます。

火力発電所の場合、石油を燃やすことで熱を得ています。石炭やガスなんかも同じで化石燃料系の発電所は燃料を燃やすことで熱を得ています。安定した電力を供給することが可能ですし、需要に応じて発電量をコントロールすることも技術的に楽ですが、燃料を国外から継続的に確保する必要があり、またCO2を大量に発生させるという難点があります。

原子力発電では質量そのものを熱に変換するという化学的な燃焼とはまったく違う原理で熱を発生させます。このとき発生する熱量はアインシュタインの特殊相対性理論にあるE=mc^2という式で算出することができます。この熱量が桁外れに膨大であるため、原子力は未来のエネルギーと呼ばれているわけです。この数式もWikipediaに項目がありますので、どのくらいのエネルギーになるのかは興味があれば調べて見ると良いと思います。
デメリットもそのぶん巨大で、制御が難しく万が一制御を失ってしまった場合にどうなるかは現在進行形で報道されている通りです。
ちなみに、質量そのものを熱に変換する方法はもう一つあります。それは核融合です。原子力に比べて有害な放射線が圧倒的に少ないため、次世代のエネルギーとして期待されているんですが、残念ながら実用化はまだまだ先だといわれています。

さて、ここまでの仕組みをざっと押さえていれば、次世代のエネルギーについてもなんとなく見えてくるのではないかと思います。
方向性としてはいくつかありますが、私個人が思いつくのは3つです。

一つは新しい熱源の確保。
もっとも単純な解決策です。核融合やメタンハイドレートなどで新しくエネルギー源が確保できれば、原発を減らしても電力をまかなうことができるようになります。

もう一つがバッテリーの進化。
風力、水力。太陽光といった自然エネルギーを利用した発電が主軸になれないもっとも大きな理由は、必要なときに必要なエネルギーを得るのが難しいという点にあります。しかし、都市電力をまかなえるほどの大量の電力を蓄えることのできるバッテリーがあれば、そういったコントロールの難しいエネルギー源を安定して活用することができるようになります。

最後の一つが、熱機関からの脱却です。
大量の電力を限られた大施設で発電する今の方式ではリスクの分散化が難しく、万一大きなダメージを受けてしまうと復旧までに時間がかかります。しかし、小規模でも高効率な発電システムを運用することができれば、小さな発電所をたくさん作ることでリスクを分散して運用することが可能になりますし、局地的な被害であれば復旧も容易です。
これはカルノーサイクルで効率が決まってしまう熱機関では物理的に不可能ですので、少なくともそれ以外の原理で小型かつ低コストな発電システムを開発する必要があります。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • 大事なことなのでもう一度繰り返します。発電所というのは何らかの手段で回転力を発生させ、その回転力を電力に変換しています

    火力発電と原子力発電は驚くべきことに水を温めて水蒸気の力を利用するところは共通なんですよね。潮力、風力、水力、地熱が別枠、
    受光素子による太陽光発電はどれ一つとも共通せず、回転力すら使わない異質な方式。
    マイクロ・コジェネというか、一般家庭単位での煮炊きやコーヒーを温めるのにも極小型水蒸気タービン発電させることを
    義務づけするよう施策して草の根かきわけ電気を大切にすることに取り組めばとピントはずれながらぼんやり考えました。

    •  化学反応で電流を取り出す方法もあります。一般には、電池のような小規模な機器で使われますが、燃料電池プラントのように比較的大型のものもあります。大型の燃料電池なら、小規模な発電所程度の設備は作れると思います。
       他の発電方法としては圧電素子やゼーベック素子を使ったものもありますが、これらは発電所のような大規模な施設向けではなくて、ごく小さな機器向けですね。

       発電機を回さないという点ではMHD発電がありますが、大規模に実用化されたという話はあまり聞きません。

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    • > 火力発電と原子力発電は驚くべきことに水を温めて水蒸気の力を利用するところは共通なんですよね

      LNG火力発電は、LNGの燃焼ガスをそのまま使っているはずです。

      今回の事故で初めて知ったのですが、原子力発電の水蒸気の温度が思ったより低いことでした。
      燃料棒のジルコニウムが耐えられないんですね。融けたり、水素の発生だったり。

      カルノーサイクルから見て、LNGタービン発電はおろか石油の火力発電より効率が悪い。

      親コメント
      • by Anonymous Coward
        アカウントないのでACで失礼

        >LNG火力発電は、LNGの燃焼ガスをそのまま使っているはずです。
        今のLNG火力って大部分がガスタービンだと思うんですが
        今のLNG火力だとLNGでガスタービン発電、更に廃熱回収ボイラで更に蒸気タービン回す
        コンバインドサイクルが主流です

        今回の事故で初めて知ったのですが、原子力発電の水蒸気の温度が思ったより低いことでした。
        燃料棒のジルコニウムが耐えられないんですね。融けたり、水素の発生だったり。

        カルノーサイクルから見て、LNGタービン発電はおろか石油の火力発電より効率が悪い
    • 大事なことなのでもう一度繰り返します。発電所というのは何らかの手段で回転力を発生させ、その回転力を電力に変換しています。

      火力発電と原子力発電は驚くべきことに水を温めて水蒸気の力を利用するところは共通なんですよね。潮力、風力、水力、地熱が別枠、

      地熱発電も水蒸気の力を利用するので前者の部類に入れたほうがいいと思います。マグマ発電は地表面から水を注入して水蒸気を得、発電後のそれを液化して再利用、という点まで合致します (地熱は噴出ガスの運動エネルギーを使う)。要するに熱を発電に使うという形式としてくくれます。この分野には太陽熱発電も含まれますね。潮力、風力、水力は自然界の位置・運動エネルギーを電力に変換するという分類。太陽光発電は、自然界のエネルギーを直接電力に変換する、第3の分類としたほうが妥当でしょうか。

      火力・原子力と、その他を区別したいなら、エネルギー源が消耗品であるか否かという点になろうかと思います (Wikipedia: 再生可能エネルギー [wikipedia.org])。

      発電所から出る余剰熱エネルギーを空調に使えばベターなんでしょうけど。まぁ余談。

      核融合やメタンハイドレートなどで新しくエネルギー源が確保できれば、原発を減らしても電力をまかなうことができるようになります。

      核融合炉発電所も「原発」と呼ばれると思います。

      都市電力をまかなえるほどの大量の電力を蓄えることのできるバッテリー

      『揚水発電所』が代表的なところですね。個人的にあまり化学反応利用の充電池は好きじゃないんですが、フライホイール・バッテリー [wikipedia.org]はどの程度巨大化出来るんでしょう。ただ結局それだけのエネルギーを貯蔵するということはそれだけのリスクがありますので…。

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    • by Anonymous Coward

      地熱も基本は蒸気タービンですよ。
      現状は手っ取り早く扱うには温度差が大きい方が良い。
      けど世の中効率が低い物を考慮すれば温度差が低い物でも出力を獲る事は可能。
      例えばカップのホットコーヒーの熱でスターリングエンジンは動かせる様に。
      そういう些細な物からの回収と社会全体の低消費電力化を行う方向性も考えた方が良いと思う。
      ただ駆動部が有る物はメンテナンスの問題が出るから、結局は小規模の標準は太陽電池に落ち着くでしょうが。

      東北被災地の再開発に置いては、そういう超低消費電力都市としての開発を考慮すれば、
      将来的には日本の資産と成ると思うんですが。

  • 使う電力量を減らすと言う方策もあります。電力消費量の少ない製品に置き換えるとか、ピーク時電力量を少なくするよう生活スタイルを改めるとか。

    ただ、どっちの方が簡単かと言われると私にはよく判んないので、ベース電力の原子力依存度の低減策としては「余程の技術的ブレイクスルーが無い」という前提に立つと、自然公園法の改正による地熱発電の強化(簡単に言えば、火山系国立公園のど真ん中に地熱発電所建てさせろ)を個人的には推しています。

    --
    KyaTanaka
    • by Anonymous Coward

      「日本の照明は明るすぎる」と昔から言われていましたから、それを外国並みにするとかできませんかね。
      灯りは夜間の消費電力のベースになりますから、それが一桁パーセントでも下がると大きいでしょうし。

      地熱発電はこの頃の大規模な地下水力発電所を見ると、充分に景観を損なわない様に全地下で作るのも難しくないと思います。
      単にエネルギー欲しさにそれ自身が産業である景観を潰すのはちょっと疑問(東京の為には地方の産業は潰れて良いのか?)ですが、
      その問題をクリアする事自体は可能だと思うので、地熱をエネルギーのオプションと見る事自体は賛成です。

      • 西洋人たちの照明が暗いのは、蛍光灯じゃなくて、白熱電球が多いからじゃないでしょうか。
        私は、あんまり海外は知りませんが、暗いなぁと思った所は、白熱球でした。

        ってことで、LED電球の普及が一番か。

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        • by Anonymous Coward
          彼らの瞳は色素が薄いからですよ。日本人にはあの照明では暗すぎるし、欧米人には日本の照明は明るすぎるんです。
      • 現状のピーク時間帯は18:00-20:00頃のようですから、照明と夕ラッシュと残業あたりが要因と言ったところでしょうか。どうしても必要な照明以外の消灯と、フレックス制の導入で通勤時間帯をずらすことで可能な気がしますが果たして。

        地熱は言われて見れば(場所にも依るでしょうが)地下に作ると言う手をすっかり見落としてました。建造物の建築になりますから自然公園法の改正は必要と思われますが、地下に作ればたとえば箱根大涌谷の景観を壊さずに地熱発電所を建てる事も出来るかもしれませんね。

        --
        KyaTanaka
        親コメント
  • by Anonymous Coward on 2011年04月04日 19時09分 (#1930578)

    > 原子力発電では質量そのものを熱に変換するという化学的な燃焼とはまったく違う原理で熱を発生させます。
    化学燃焼も質量が熱に変わってるんですが。変換効率が低すぎて計測できないだけで。
    > ちなみに、質量そのものを熱に変換する方法はもう一つあります。それは核融合です。
    究極は対消滅(変換効率100%)でしょう。もっとも反物質を調達できない(作り出すにしても余計にエネルギーを使う)のでエネルギー源としてはまったく実用になりませんが。

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吾輩はリファレンスである。名前はまだ無い -- perlの中の人

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