8月のネットの羅針盤はステルスマーケティングの話でしたが、かなり面白かったので感想。
　ステルスマーケティングというのは、定義的には「宣伝と思わせない宣伝」のことですが、問題になるのはおおむねやらせ問題ですね。

　別にこれは最近に始まった話ではなくて、かなり古くから使われていた手法です。番組中で成功例として取り上げられていたのが、G-SHOCKの事例。ハワイのサーファーに無料で商品を配りまくり、つけてもらうことで流行しているようなプロモーション効果を得たということらしいです。
　これがいけないかといわれると番組中でも全然そんなことは言っていなくて、むしろ良い事例として紹介されていました。

　じゃあ問題になるのはどんなのかというと、早い話がやらせですね。実例でいえば、ソニーウォークマンのやらせブログ、あるある大事典の納豆事件なんかが上がってました。ネットユーザーになじみの深いところではGK問題なんかもそうですし、芸能人ブログでのランクごとの料金とか生々しい金額が出てくるちょっとやばいネタまでいろいろ。
　今回ゲストがかなり生々しい現場を知っている人で、いつもの小寺氏も製品紹介ライター活動やテレビ番組制作にかかわっていたりする経験があるので、素人にも面白い裏話の連発でした。
　テレビや雑誌なんかのマス系メディアの場合、やらせというのはけっこうな効果を発揮する手法であり、製作費の厳しい末端の現場ではやらざるを得ないということもままあるようですね。

　手法そのものの問題とは別に、それが許されるのかどうかの倫理基準のようなものについても少し触れていました。アメリカではいわゆるやらせブログには法的な規制がありますが、日本にはそんなものはないので結構普遍的に行われており、その中でも露骨に目立つやつがやり玉に挙がっているというのが現状のようです。
　2chなんかでよく話題になるやらせ問題にしたって、やらせ問題を取り上げるところでそれと勝るとも劣らない偏向的な情報の取捨選択が行われていたりする状況があり、どこまでがOKでどこまでがだめなのかという基準もあいまいなまま。やらせバッシング自体も一種のやらせであるという意見が面白かったですねー。
　小寺氏がフジテレビの韓流ごり押し問題について個人で(といっても調査で使ってる機材は半分以上業務用でしたが)できるところを調査した結果を発表していましたが、結論としてはちゃんと人と時間(とお金)をかけて調査しないと信用できる数字にはならないということでした。

　メディアでの取り上げ方についてはいろいろな視点がありますが、作る側のプロが本当に面白いと思って取りあげたのであれば報酬をもらっての紹介もいいんじゃないかというのが出演者間での一致した見解かな。もちろん、ウソはつかないことが前提の話ですが。
　ただ、芸能人ブログみたいな、コンテンツ制作素人のメディアをまきこんでのやらせはNG。商品を提供して好きに感想を書いてくださいと最初から情報公開するなら別ですが、素人が小遣い稼ぎに気に入ったように見せかけてごり押しで紹介するなんてのはだめだろう、と。

　他にあった話題としては、やらせを見抜く方法みたいなものもいくつか紹介されていました。一番確実なのは「人を見極める」ということですね。
　レビューにおいて良い点と悪い点をきちんと整理して紹介している人なのか、過去の傾向を見て褒めるだけ、けなすだけのような偏った評価を下しているのかなど。そこがわかっていれば、たとえ信用出来なくてもかかってるバイアスを差っ引いて読めばいいわけで。まあ、差っ引いた結果情報がない人もいるでしょうが、そういうのは参考にしなければいいわけで。その意味で匿名の集団はかかっているバイアスもわからないので全く当てにならないという話も出てました。
　おもしろかったのはAmazonのレビューの傾向の見方ですね。良書というのは☆５つから☆１つまで順に数が減っていくものだが、アンチや信者が付いてやらせ合戦をしている場合は☆５つと☆１つに極端に偏るので、そういう作品のレビューはあてにならないと考えた方が良い。で、☆３つや４つが多くて５や１～２が少ないものはいわゆる凡書である、ということらしいです。

　それにしても津田さんの司会は毎度毎度フリーダムだなぁ。ツイッターやコメントを拾うのがうまいとかもあるけど、やばい話ぽろぽろ言っちゃうし。そのおかげで見てる側はずいぶん楽しいわけですが(笑)