転売屋について
このエントリでは転売を「一般市場に出た商品を買い取って別の場所で売って利ザヤを稼ぐ行為」と定義します。いわゆる問屋業は一般市場に出回る前の流通網ですので、転売にはあたりません。店舗を構えて買い取りと販売の両方を行っている中古屋も別の場所で売っているわけではないので、該当しません。
いわゆるダフ屋や、限定品などを確保してネットオークションなどでさばくバイヤーなどが「転売屋」となります。

１．本来、転売屋とは目利き能力で食べてる人だった

　転売屋というのはけっこう古くからある商売で「せどり」のようにそれを専門の職とする人がネット普及以前から存在した。
　古本のせどりの場合、各地の古本屋を回って本を仕入れ、別の古本屋により高い値で売るという商売をするわけだが、いかにして「余所で高く売れる本が安くで売られているか」を見分ける目利きの能力が必要になる。少なくとも、目利きで食べている古本屋以上の目利き能力がないと儲けなんて出ません。

　これは古本のせどりに限った話ではなく、中古品を買い取っては別の場所で売る転売屋全般に言える話なのではないかと思います。

２．ネットの普及で変わってしまった目利きの概念

　ところが、近年になって話題になったネットせどりは、目利きをAmazonの中古販売額なんかを見て機械的にやってしまっているわけです。新古書店に並んでる本のISBN番号をAmazonで検索し、中古出品価格を見れば、経験なんてなくても市場価格がわかってしまうわけです。
　少なくとも相場の把握に関してはネット経由の方が迅速かつ広い範囲での情報が手に入りますので、従来のせどりで重要だった能力の多くがITのおかげで「誰にでもできる簡単なもの」になってしまったわけです。
　おそらく、本以外も含めておおよそ全てのジャンルの商品について、似たような状況になっているのではないかと思います。

３．転売屋で必要とされる能力は目利きではない

　さて、ネットの普及で目利き能力での差別化というのは非常に難しくなってきたわけですが、代わりに必要になってきた能力というのは何かというと、高くで売れる場所を見つける能力になるのではと思っています。
　ただし、ネットで通販すれば直販でものが買えてしまう時代に、真っ当な流通ルートで「高くで売れる場所」なんてあるわけもなく、事実上「高く売れる場所を作り出す能力」になってしまっているのではないかと。
　その手段の一つが「需要にこたえられないが値段を上げられない品」を先回りして確保するというやり方。初回限定品やコンサートチケットのような数が決まっている品に販売元がかけているふるいの仕掛け(先着、抽選など)を人海戦術やらIT的な手段を駆使してクリアし、転売目的購入して値を釣り上げて売る。
　これが誰でもできることであれば、目利きの概念と同じでみんながやりだしてろくな儲けにならなくなるのだが、今はそうなっていない。なぜかというと、金のためなら他人に迷惑かけてもなんと思わない一部の連中しか手を染めないからと思われる。少なくとも、転売屋が扱っている商品の関係者からは蛇蝎のごとく嫌われているし、実際問題として対策も検討され続けているわけで、そういう妨害に負けないだけの根性のようなものが必要になる。
　つまり、転売屋に最終的に必要な資質は反社会的な手段でも平気で実行できる面の皮、というわけだ。

４．目利きの能力を生かす道

　さて、転売屋についてはまあこの辺で置いておくとして、今度は目利き能力を活かす方法ということを考えてみたい。
　個人的にいいと思うのは批評・解説に関する職ではないかと思う。ネットによって情報が氾濫する現在、有用な情報をチョイスして提供する、というのは非常に重要になってくると思う。検索エンジンが拾ってくれないような埋もれてしまった有用な何かを見つけ出して紹介する、まさに目利きの能力が問われる分野だと思う。
　あとはそれをどうやってお金に換えるか、であるが、こればっかりはプラットフォーム屋が提供するしかない。キュレーションなどの用語で最近注目されている分野でもあるので、そのうちある程度の需要が表面化するのではないかと思う。

　あとはその時になっていかにして目利きの能力をアピールできるか、が鍵になってくるのではないだろうか。